第9話 噂話
旅館の大広場にレクリエーションを終えた生徒たちがぞろぞろと集まり始めた。望月もその輪に入り馴染んでいった。
「澁澤先生、本当に助かりました」
「美谷野先生お疲れ様でした。何が起こっていたのかわからない部分もありますがひとまずよかったですね」
「そうね、望月君が見つかってまた命拾いしたわ」
「またって他に何かありました?」
「うん、実はね最近家の前にゴミが撒かれてたり、知らない女に付きまとわれたりして困っていたの。学校では何も起こらないから関係ないかも知れないし気のせいかもしれないんだけど、でも飲みに行った帰り道でいきなり後ろから羽交い締めにされて怖い思いをした事があって」
「えーっ、大丈夫だったんですか?」
「その時はたまたま東海林先生が居合わせて駆けつけてくれたの。東海林先生ってわかる?」
「ええ、女子に人気の先生ですよね」
「そう。偶然後ろを歩いてて異変に気づいて駆けつけてくれたの。怖くて声が出せなかったから本当にスーパーヒーローだと思った。最近、助けてもらってばかりだなぁ」
「みことさん、僕もいつだってあなたを守る自信がありますから、任せてください。澁澤茶色はみことさんの味方です」
「急にどうしたのよ。あはは…。 でもありがとう頼りにしてるよ」
みことの口から東海林の名前が出た事で思いが沸々と湧き上がる様だった。
生徒達はお風呂組と夕食組に分かれてタイムスケジュール通りに行動していく。先に夕食となったみことのクラスは食堂へ移動して行った。配膳が終わらず男子生徒の一部が立ち遊び始めた。女子は噂話から怖い話に変わり盛り上がりをみせている。
「うちの学校、幽霊が出るって知ってる?」
「あたし、友達のお姉ちゃんから聞いたことあるよ。中庭のしょうこさんでしょ」
「あれって本当にあった話でね、いじめられていたしょうこさんが中庭の木で首を吊って死んじゃったんだって。だからあそこには小さなお地蔵様があって供養してるんだって」
「知ってるー。毎年八月三十一日になると先生達が集まってお経唱えてるって聞いたことあるもん」
「だからかー、新学期になってお地蔵様見ると新しいお花がいけてあるの」
「そーだよ。あんまり中庭で遊ばない方がいいんだよ。取り憑かれるよ」
「えーしょうこさん怖いー」
「誰かが、コックリさんでしょうこさんの霊を呼んじゃったんじゃないのー」
「えー怖すぎるから、もうやめてよー」
噂話が嘘か本当か真意などどうでも良く、怖い話で盛り上がればそれを知っている自分は情報ツウでイケているとでもいった具合だ。もし一部分でも本当だとしたら容赦なくディスりまくっていてタチが悪い。しかし女子の序列はこういったところから生まれる。クラスカースト一位の石橋メアリはホワイトコーディネートの上下の服にツインテールの髪型、ピンクの唇をぷるんとさせるファッショナブルな女子だ。純和風の旅館に居るのも似合わないし、ランドセルも似合わなそうだ。
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