第39話 佐川と山田、懇願する。「何もわかってないようだから、教えてやろう。あんたらが今まで強かったのは、新見政宗がいたからだ」 追放者視点

「く、クビはやめてくれ……っ!」

「そうよ……。たった一度の失敗でクビなんて」


 佐川と山田は、黒田に懇願する。


 オチブレロをクビになれば、


 二人は行くところがなかった。


「おいおい。ビッグラットの討伐は、最低ランクのクエストだぜ? これより難易度の低い仕事はウチにはねえよ」


 黒田はやれやれと、失笑まじりに言った。


「違うっ! もっとランクの高いクエストなら、俺たちは力を発揮できたんだっ!」

「あたしたちにふさわしい仕事をさせなさいよっ! そしたら活躍してみせるわっ!」


 現実をまったく受け入れられない二人に、


 黒田はイラついてしまい、


「あんたら……なんで自分たちが負けたのか、わからないのか?」

「「お前のせいだっ!」」


 挙句に、黒田のせいにする佐川と山田。


「何もわかってないようだから、教えてやろう。あんたらが今まで強かったのは、新見政宗がいたからだ」

「な……っ! 新見なんて関係ないっ!」

「ふ、ふざけないでよっ!」

「はあ……新見政宗の鑑定のおかげで、魔物のステータスや弱点がわかり、あんたらは楽に戦えていた。完全に彼の鑑定に依存していた。だから探索者として、未熟者なんだよ」


 未熟者と言われて、佐川と山田は。


「ははは……俺たちが新見に依存? あり得ない。俺たちをクビにするために、デタラメ言ってるだけだ」

「あたしたちが無能な新見に頼るわけないでしょ? バッカじゃないの!」


 この後に及んでも、二人は現実を受け入れない。


「やれやれ。何を言ってもダメか……」

「うるせえっ! こんなクソギルド、こっちからやめてやるっ!」

「やってられないわっ! この無能ギルマスっ!」


 二人は啖呵を切って、オチブレロから出て行った。


「ふう……さすが黒田社長。お荷物を自分から退職させたっすね!」


 ギャルヒーラーが笑う。


「くっくっく……すべては【もう遅い】のさ」


 黒田は悪どい笑みを浮かべた。



 ——この後、待ち受ける過酷な運命に、


 佐川と山田は、まだ気づいていなかった。




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