第37話 佐川と山田、 ネズミにボロ負けする「イキってたくせにダサすぎw」 追放者視点 

 ——新見が政府高官に土下座されていた、一方その頃。


 佐川と山田は——


「く、臭えな……ここ」

「きゃあっ! ゴキブリよっ!」


 池袋ダンジョン近くの下水道。


 ここに湧いているビッグラットを駆除するのが、佐川と山田の初仕事だ。


【配信コメント】

:めっちゃ汚いやんwww

:臭そうw

:惨めだなw 今どんな気分?

:うんこ食えよ。


 ビッグラットの駆除も、配信する。


 ゲテモノ配信枠——気持ち悪い魔物を討伐する配信で、一部の物好きなリスナーに人気がある。


【配信コメント】

:山田ってブッサwww

:うんこ剣聖佐川

:氏ね


 当然、コメント欄の治安は最悪であった。


 (クソっ! ディスばっか書き込みやがって?)

 (ブロックしてやりたいのに〜〜っ!)


 どんなに誹謗中傷を書き込まれても、二人はリスナーをブロックできない。


 リスナーが何を書き込んでも、絶対にブロックしない。

 

 それが、オチブレロの方針だからだ。


 探索者をディスっても許されるチャンネルとして、タチの悪いリスナーを集めていた。


「さっさと終わらせよう」

「そうね……臭いが髪に移るわ」


 しばらくの間、下水道を歩くと、


 ビッグラットの群に出会う。


「あれが……ビッグラットか。汚ねえなあ」

「気持ち悪いわね……早く駆除しましょう」


 二人に気づいたビッグラットが、


 襲いかかってくる……!


「ははは……! みんな見ててくれっ! 俺が殲滅するからなっ!」

「佐川さんずるいっ! みんな見てて! あたしが魔法で華麗に全滅させるからっ!」


【配信コメント】

:ワンパン期待

:普通、倒せるよな

:さっさとやれよ


 (雑魚がっ! 俺の剣でぶった斬ってやるっ!)

 (ネズミちゃん、あたしの魔法で一撃ねえ〜〜っ!)


 ビッグラットはFランクの魔物。 


 最低ランクの強さしかない。


 二人は楽に、勝てると思っていたが——


「よし……っ! スラッシュっ!」


 佐川が剣を振るが——


 ガキンっ!


 剣が、弾き飛ぶ。


「な……っ! ど、どうして……っ!」


 佐川は慌てて、剣を取りに行くが、

 

 下水の中に、剣は沈んで……


「もう何やってのよっ! あたしが倒してやるわ! ファイアーボールっ!」


 山田は詠唱し、


 ファイアーボールを放つ!


 だが——


「全然、効いてない……っ!」


 ビッグラットは、平気な顔をしている。


 まるで何事もなかったような。


【配信コメント】

:ダッサwwwwwwwwwwwwwwww

:弱すぎw

:1匹も倒してないじゃん


「クソ……! こうなりゃ素手で!」


 佐川はビッグラットに拳を叩き込むが、


 ガブっ!


「ぐ……っ! 噛まれた!」


 ビッグラットに手を噛まれる!


【配信コメント】

:おい、噛まれたぞ……

:毒あるからヤバくね?

:死ぬぞ。マジで

:ざまぁwww


「ヤバいわよ……もう撤退しなきゃ……」


 山田が泣きそうな顔で言うが、


「ダメだ! ここで逃げたら俺たちは……」


 佐川は逃げずに戦おうとする。


 ビッグラットの討伐に失敗したとなれば、


 クビになるのは必至——


「このままじゃ死ぬわよっ! もう逃げるしか……」

「……クソクソクソっ! に、逃げるぞっ!」


 二人は急いで逃げ出す。


 全速力で、引き返して行った——


【配信コメント】

:イキってたくせに

:ダサすぎる

:マジで逃げたw

:初配信乙www

:クビ決定やなw




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る