第13話 デビュー配信でサインを求められる「あたし、新見担です……っ////」

「……えーリスナーの皆さん。この度、DLiveからデビューすることになりました、新見政宗です。よろしくお願いしますっ!」


 今日は俺のデビュー配信だ。


 新宿ダンジョンの中層まで行く予定。


【配信コメント】

:丁寧すぎwww

:社会人じゃんw

:もっとリラックスして


 地味な鑑定士が大手事務所からデビューして、どうなることかと思ったが、


 コメント欄は、みんな好意的だ。


「新見くん。同接は10万人を超えてるわ……っ! デビュー配信でこれはすごいっ!」


 魔石通信で、香月社長が教えてくれる。


「今日は新宿ダンジョンの中層まで行きます。高層は危険なので中層の60Fまで行ったら帰還します」


【配信コメント】

:新宿ダンジョンって100Fまでか

:高層はS級の魔物が出るし

:中層まで行くのもすげえよ……

:頑張れよ!


 新宿ダンジョンは低層から割と強めの魔物が出る。


 どちらかと言えば、中級者以上のダンジョンだ。


「……では、ダンジョンに入る手続きから始めます」


【配信コメント】

:そこからやんのかよw

:丁寧すぎるwww

:律儀やな


 俺は新宿ダンジョンの受付へ行く。


 受付のダンジョン庁の職員に話しかける。


 若いお姉さんの職員だ。


「お疲れさまです。私はDLiveの新見政宗です。今日は中層までの潜るのと、配信の許可をもらいにきました」

「えっ……! に、新見さんですかっ! あの【ミノタウロスワンパン鑑定士】の?」

「えっと……まあ、そうですけど」

「わ、わかりました……っ。すぐに許可を出しますっ!」


 俺の探索者アカウントに、許可証を発行してくれる。


 探索者はダンジョン庁のデータベースに、アカウントを登録。


 このアカウントで、ダンジョン庁は探索者を管理していた。


「ありがとうございます。では——」


 俺がダンジョンの入口へ向かおうとしたら、


「あの、すみません……仕事と関係ないんですけど」

「……?」

「こ、ここにサインもらえませんかっ?」

「サイン……?」


 職員が俺に、魔石を渡してくる。


「あたし、【新見担】なんですっ! チャンネル登録して、投げ銭もしてますっ! 本当に好きすぎて……すみません、つい興奮してしまいました」


【配信コメント】

:仲間がいたwww

:あたしも【新見担】ですっ!

:有名人すぎw


 「◯◯担」とは、◯◯が推しの配信者という意味。


 つまりこの職員は、俺を推してくれている——


「配信をご視聴いただきありがとうございます。魔石にサインさせてもらいます……」


 俺は魔石に「新見政宗」とサインペンで書く。


【配信コメント】

:めっちゃくちゃ丁寧やんwww

:サインそのままwww

:サインの練習しようw

:あたしもサインほしすぎる

:いいなー!


「あ、ありがとうございますっ! 一生の宝物にしますっ!」

「こちらこそ、応援ありがとうございます」

「つっ〜〜! 今日は早退して配信見ますねっ!」

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