第9話 破格の高待遇※所属してるだけで報酬ゲット💴

「今日はお越しいただきありがとうございます。私はDLiveの社長、香月です」

「どうも。新見です——」


 港区の一等地にあるビル。


 その最上階に、ダンジョン配信者事務所DLiveが入っていた。


 年商100億の、業界トップの事務所だ。


 社長室に通されて、ふかふかのソファーに。


「新見さんに、ぜひウチの事務所で配信者になっていただきたいのですっ!」


 香月社長が、頭を下げる。


 社長に頭を下げられて、恐縮だ。


「ありがとうございます。でも、先日の配信がバズったのは桜井さんのおかげです。俺なんかの配信、みんな見ないですよ……」


 俺は鑑定士だ。


 剣聖や賢者のように、派手な戦闘向きのジョブじゃない。


 誰もただの鑑定なんて、見たくないはず——


「新見さんの鑑定は、ただの鑑定ではありません。S級の魔物、ミノタウロスを素手で倒せたのは【普通は見えないもの】が、見えたからでは?」

「えーと……ただ【コア】を見つけただけですが」

「コアは【神眼】の域に達したSS級鑑定士にのみ見えるものです——もしかして、ご存知なかったのですか……?」

「すみません。全然知らなかったです……」


 栄光の剣(株)では、会社に貢献するためにただ必死だった。


 会社で鑑定士は俺しかいなかったから、アイテムも装備も魔物も罠もありとあらゆるものを鑑定した。


「それに、新見さんの配信を見たい人はたくさんいます」


 香月社長はスマホを取り出して、


「これを見てください。たくさんの人が、新見さんの配信を待っています」


 つぶやきアプリY、トレンドランキング1位——


 #ミノタウロスワンパン鑑定士 963871件

 

 @ryuuu

 次の配信早く見たい見たい見たい見たい見たい


 @kanteilove

 鑑定士様抱いてほしい♡


 @amuamu

 才能ありすぎwww


「あの配信の後から、ずっと新見さんの話題がトレンド1位です。世界中が新見さんを待っています」

「嘘だろ……こんなにたくさん」

「どうかお願いですっ! ウチの事務所の配信者になってくれませんか……っ? 契約金は、新見さんの言い値で良いです。いくら払ってもかまいませんっ! 勤務時間は完全自由です!」

「いくらなんでもそれは——」

「新見さんがいてくれるなら……配信しなくても報酬を支払いますっ!」


 要は、何もしなくても報酬がもらえる。


 破格の高待遇だが。


「どうか、どうか、お願いします……っ!」


 香月社長は立ち上がり——


 次の瞬間。


 ひざまずいて、


「お願いしますっ! どうか、ウチの事務所に来てくださいっ!」


 ——俺に、土下座した。



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