第3話 ワンパンから盛大にバズってしまう※しかし鑑定士は気づかない

「誰かぁぁぁぁぁ!! 助けてぇぇぇ!」


 女の子が走ってくる。


 金髪のエルフ。


 胸をめちゃくちゃ揺らしながら逃げて……


 て、そんな場合じゃ。


【配信コメント】

:主、早く逃げろ!

:死ぬぞ……

:ガチでヤバいやん……


 ミノタウロスは見た目と違って、かなり素早い。


 もう逃げきれない。


「きゃあ!」


 エルフの女の子が足を挫いた。


 このままじゃ、ミノタウロスにエルフの女の子は殺される。

 

 次に殺されるのは俺。


 なら最後に、俺にできることをしよう——


「鑑定、アクティベート!」


 ミノタウロス

 Lv.85

 腕力:999

 器用:214

 頑丈:852

 俊敏:725

 魔力:385

 知力:147

 運:72

 弱点:右胸にコアがある

 通常ドロップ:魔石(S)

 レアドロップ:ミノタウロスの斧


 待ってくれ。


 これは強すぎるだろ……


 だけど、コアが右胸にあるのがわかった。


 コア——あらゆる生命の根源。


 コアを的確に攻撃すれば、どんなモンスターも一撃で倒すことができる。


 配信者ギルド会社じゃ、俺がコアの場所を剣聖と賢者に教えて、2人がコアを攻撃する。


 2人が派手な攻撃でコアを破壊して、再生回数を稼ぐためだ。


「きゃあ!」


 エルフの女の子がこけた。


 ヤバい。このままじゃ……


「ぎしゃあぁぁぁぃぁぁぁぁあ!!」


 ミノタウロスがデカい斧を振り上げる——


 俺はとっさに前に出た。


 そして、右胸に拳を叩き込む。


 俺の武器は、己の拳しかなかった——


「ぐゎぇぇぇあぇぇぁぇぁぇぇぇえ!!」


 ミノタウロスが、苦しむ。


 ヨダレを撒き散らしながら、のたうち回る。


「ぐぁぁいぁぁぅぁぁぃ……」


 絶命。


 目の前に、ミノタウロスの死体が。


「み、ミノタウロスを倒した……」


 この時、俺は盛大にバズり始めた——ことに、まだ気づいていなかった。



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