第14話 滅龍との戦闘

 ダンジョンのボスである滅龍と戦うことにした僕は、滅龍の能力に苦戦していた。


「くそ、なんだコイツ。いくらドラゴンの中でも強い方と言ってもこんだけ攻撃してほぼ無傷って意味わかんねぇよ」


 滅龍に苦戦していると僕の影に居るディストラが話しかけてきた。


「ライトニングさん。結構手こずってるようですけど、手を貸しましょうか?」


「ふん、いらないね。コイツは僕だけの力で倒してやる!」


「でもこのままだと、ドラゴンが魔素切れになるまで戦うことになりますよ」


「なんでだ?」


「何故なら、滅龍の魔法は全てを壊す魔法なので、いくら攻撃してもその攻撃を壊すことにより、滅龍には攻撃が通らないんですよ」


「まじかよ。でもそれなら、壊しきれない威力の魔法をぶつければいいんだろ? おぉー行くぞ、滅龍!」


 僕がそう言って攻撃をしようとすると、ディストラは呆れた表情で止めてきた。


「あの……。その魔法を打てば、このダンジョンは壊れてしまいますよ? このダンジョンを勇者パーティーの強化に使うんじゃなかったんですか?」


 ディストラの言葉で目が覚めた僕は、魔力を込めるのを辞めた。


「確かにそうだったな。ディストラのおかげで冷静になれたよ。ありがとう」


「いえ、お役に立てて何よりです」


 ディストラはそう言いながら頭を下げた。


「うーんと。それじゃあ、コイツは倒せないわけだし、逃げるか」


 僕は滅龍を倒すのを諦めダンジョンから出ることにした。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ふぅー、魔物に追いかけ回されたけど、なんとか出れたぜ」


 僕がダンジョンから出ると外にはすでに日が昇っていた。


「まじかよ、魔物達と遊びすぎたー。眠いよー」


「だから言ったじゃないですか。魔物たちはスルーしましょうって。私は貴方の影の中で眠れたので、どうでもいいですけど」


 くそーコイツ、影での暮らしにもう馴染んできてやがる。


「なぁディストラ。このへんで寝れる場所ってあるか?」


 僕はこのダンジョンの警備をしていたディストラならこの辺のことも知ってると思い寝れる場所があるか質問した。


「そうですね。このあたりは魔物が多いですから、一旦この森から北に行き草原で寝るのはどうでしょう? 寝てる間は私が周りを見てきますので、安心して寝てもらって構いませんよ」


「確かに草原なら、気持ちよく寝れそうだな」


 僕は、森を抜けて草原にある小さな丘の上で寝ることにした。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数分後。草原に着いた僕は、早速寝ることにした。


「ふぅーやっと寝れるぜ」


 僕はそう言いながら、仰向けに寝転んだ。


「それじゃあディストラ。寝てる間はよろしくな」


「はい、もちろん任せて下さい。私が寝てる間はライトニング様が守ってくれたので、今度は私がお守りします」


「ありがとうディストラ。それじゃあおやすみ」


「おやすみなさい」


 こうして、僕は深い眠りについたのだった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ライトニング様、起きて下さい。ライトニング様」


 数時間が経っただろうか? ディストラが僕の体をさすって起こしてきた。


「うーん、今何時だ?」


 僕は目を擦りながらディストラに尋ねた。


「もう夕方ですよ」


「そんなに寝てたのか」


 僕はそう言いながら、大きなあくびをした。


「そうですよ。それでライトニング様、これからどうします?」


 僕は寝起きの頭をフル回転させ一つの結論を出した。


「そうだな、とりあえずお腹が空いたし一旦取りに戻って狩りをするか」


 こうして、夜ご飯にする為に僕達は再び森へと入って行った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 夜ご飯にするために森に狩りをしに来た僕達は、鹿の群れを見つけた。


「今日の夜ご飯は鹿にするか」


「そうですね」


「なぁディストラ。どんぐらいお腹空いてる?」


「私は、まるまる一頭は食べたい気分です」


「そっか、なら2頭狩るか」


「了解です」


 2頭鹿を狩ることにした僕らは、確実に狩るために一頭ずつ狩ることに決めた。


「それじゃあやるぞ。ディストラお前ミスるなよ」


 僕は、魔法を撃つ構えをしながらディストラにそう言った。


「ライトニング様こそ、ミスらないでくださいね」


 ディストラも魔法を撃つ構えをして、苦笑いをしながら僕にそう言ってきた。


「僕はミスらないよ」


「そうですか」


 僕達は鹿を狩ることに全神経を尖らせた。


「それじゃあ行くぞ。せーのっ……」


 僕らはタイミングを合わせて魔法を打った。


電気之銃弾エレキショット!』


影之狙撃シャドウスナイプ!』


 僕らが魔法を打つと、周りにいた鹿たちは逃げた。


「よし、2頭とも仕留めれたな」


「そうですね。良かったですケンカにならずに済んで」


「まぁ狙撃しなくても、僕らなら一頭も逃さずに狩れたでしょ」


「それもそうですね」


 鹿を2頭狩った僕らは、ダンジョンの入口で食べることにした。


「ここなら雨が降っても大丈夫ですし、周りを警戒しながら食べなくても済むのでいい所でしょ」


「そうだな、もし魔物が来ても道が2方向しか無いから対処しやすい」


 鹿が焼けるのを待っていると何やら複数の足跡がした。


 僕は急いでコートと仮面を着け、ディストラは僕の影に入った。


「誰だ!」


「うわっ出たー!」


 足音の正体は僕が救けた冒険者たちだった。


「びっくりしたぁ。お前たちか」


「あっ! 貴方は、ライトニングさんじゃないですか」


「よかったぁ生きてたんですね」


 リーダーらしき男とピンク髪の女の子は安堵の顔を浮かべていた。


「君たちこそ、無事みたいで良かったよ」


 無事に帰ってくれないと雷鳴の猫王の名を広めれないからな。


「ま、私は君が死ぬわけないと信じてたけどね」


 金髪の男は、キザなセリフを堂々と口にした。


 少しすると、冒険者達のお腹が鳴った。


「すいません……」


 リーダーらしき男が頭を下げて謝った。


「君たちもおなかすいてたんだね。良いよ、皆で食べようか」


 僕がそう言うと、金髪の男が鹿にむしゃぶりついた。


「こら! お前何してるんだ!」


 リーダーらしき男が金髪の男を叱ったが、その場はライトニングが許したことで事なきを得た。


「いただきまーす」


 僕が鹿を食べようとすると、影に入っているディストラが不満そうに話しかけてきた。


「ちょっと私のご飯がなくなっちゃうじゃないですか」


「ちょっとすいませんね。席を外します」


「あっ、どうぞ……」


 僕は冒険者達に一言言って、慌ててその場を離れた。


 「ごめんって。この人たちと別れたらまた狩りするから。今は静かにしててくれ」


「絶対ですよ!」


「わかってるよ」


 怒っていたディストラを納得させた僕は皆の所に戻った。


「おまたせー」


「「「おかえりなさい」」」


 皆のもとに戻った僕は名前を聞いてないことを思い出した。


「そうだ僕、みんなの名前を知らないんだけど。皆の名前を教えてもらってもいいかな?」


 僕が名前を尋ねると、最初に冒険者達のリーダーらしき屈強な男が名乗り出た。


「そうでしたね。まず私はこのジャスティスクローのリーダーをやっているイーサン・ブラウンです」


 次にナルシストっぽい金髪の剣士が名乗った。


「そして、俺様が前線担当のエイダン・ロースだ!」


 最後にピンク髪のおとなしい女の子が話し始めた。


「私は、後方支援担当のサキです」


「自己紹介ありがとうございます。それで、ジャスティスクローの皆さんははなんでまたこのダンジョンに来たんですか?」


 僕が質問するとイーサンが答えてくれた。


「そりゃあ、だって心配だったからですよ」


「そうなんだ。心配しなくてもいいって言ったのに」


 僕がそう言うと、サキが食い気味に言ってきた。


「心配しなくても大丈夫と言われても、あのドラゴンすごく強いじゃないですか。どうしても心配になってしまいますよ」


「サキは優しいんだな」


「からかわないで下さい……」


 サキは頬を赤くして俯いた。


 照れてるのか、可愛いな。


 その後も僕たちは談笑していた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数分後。


「それじゃあそろそろ僕は別の所に行くけど、君たちはどうするの?」


「そうだな。目的は果たしたわけだし。ラスファートに一回帰ってから明日には旅に出ようと思う」


「そうなのか。それじゃあまたどこかで会おうな」


「はい。またどこかで会いましょうね」


 ジャスティスクローの皆と別れた僕は、今度は大陸の西に向かっていた。


「確か、ラスファートの西には大きな岩山があるんだよな」


 西に向かって走っていると陰から声がした。


「あのーライトニングさん。僕のご飯はどうなったんですか?」


 あっすっかり忘れてた。


「ごめんごめん、すっかり忘れてたよ」


 僕は笑いながらそう言った。


「ひどいです」


 ディストラは頬を膨らませながら僕の体を突いてきた。


「まぁまぁ、あの岩山で良い獲物が居たら、いっぱい狩るから」


「今度こそ忘れないでくださいね。もぉ」


 ディストラはそう言いながら、僕の影に入っていった。


「了解でーす」


 僕は軽いノリで返事をしながら岩山へと走った。

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