第13話 ダンジョン攻略

 ラスファートの東に大きな森を見つけた僕は野宿をするために森に入った。


 野宿する場所を早く見つけないと……。

 それにしても、この森結構魔物が居るんだな。勇者パーティーの強化に使えそうだ。


 そんなことを考えながら少し走っていると、真新しい人の足跡があった。


「この足跡、まだ湿ってるな。こんな危険な森に何をしにきたんだろう?」


 もしかしてこの世界には、魔王とか勇者が居るぐらいだし、ダンジョンもあってこの足跡は冒険者の物かも。


 そう思った僕は、ダンジョンにたどり着けると思い足跡を追うことにした。


 足跡を追って走ること15分、僕はダンジョンにたどり着いた。


「やっと着いたぜ。結構遠かったけど本当にこの世界にダンジョンがあるのか」


 興奮した僕は後先考えずにダンジョン入った。


「うわー!!」


「ヤッバ!」


「イヤっ来るなっ! 虫は無理なんだよぉ〜」


 案の定罠に掛かりまくったが、鍛えていたおかげで今のところ無傷でダンジョンを攻略できている。


 僕がダンジョン攻略を楽しんでいると、ダンジョンの地下深くから膨大な魔力の反応が発生し、ダンジョン全体に衝撃音が響き渡った。


 音がしてから少し立つと、ダンジョンの下の方から何度も大きな衝撃音が聞こえた。


 何だこれは、まさか先に入った冒険者がダンジョンのボスと戦ってるのか?


「それはまずい、このダンジョンは勇者パーティーの強化に使う予定なんだ。倒されては困る」


 ボスを倒されては都合が悪い僕は遊ぶのを止め、ダンジョンの最下層まで走った。


「よし、ダンジョンの最下層に着いたぞ。急いでボスの間に行かないと」


 僕がボスの間に向かって走っているといきなり横から奇襲された。


 僕は壁に打ち付けられた。


「うわーびっくりした。いきなりなにするんだ!」


 攻撃を受けた方を見ると、そこには角が2本生えていて、キレイな顔立ちで黒髪黒目の男の悪魔がいた。


「なんでこんな所に悪魔が居るんだ?」


「なぜかと聞かれても、ダンジョンは我ら魔王軍の拠点なので我が居ても不思議では無いと思うが」


「そうか、でも僕は急いでるんだそこをどいてくれ」


 ライムは少し声を荒げて悪魔を睨んだ。


「それはできない。我は魔将軍の一人でこの拠点の警備を任されている」


「そうなのか。じゃあ何故僕が来る前に冒険者が来ていたはずだが何故足止めをしなかった」


「あの者たちでは、このダンジョンのボスを倒せないからだ」


 そうなのか。じゃあさっきの衝撃音も冒険者がダンジョンのボスにやられている音だったのか。


「そうか、なら安心してお前の相手をできるな」


「どういう意味かは知らんが、貴様はダンジョンのボスを倒しかねないので我が倒させてもらう!」


 悪魔はそう言うと地面に姿を消した。


「一体どういう魔法なんだ! だが残念だったな。僕には相手の魂が見えるから姿を隠しても場所がわかるんだよ! ……、そこだ!」


電気之銃弾エレキショット!!』


 僕は、指で銃の形を作り指先から雷を一直線に放った。


「ウワァー!」


 攻撃をくらった悪魔は痺れて動けずにいた。


「お前暗殺者なのに、しびれ耐性とか無いんだな」


「クッ、お前只者ではないと思っていたが、こんなに強いとは……」


「それはどうも」


 ライムは前髪をかきあげ、クールに返した。


「それでさっきの姿消したのどうやったんだ」


「それは影魔法で影の中を自由に行き来したり、自分の影を操ったりする魔法だ」


「すげぇー、めっちゃかっこいいじゃん」


 僕がそう言うと、悪魔は照れくさそうに尋ねた。


「本当にそう思うか?」


「うんかっこいいと思うよ」


 そう言うと、悪魔は何故か泣き出した。


「おいおい、どうしたんだよ」


「ごめん、僕今まで悪魔たちにも魔物たちにもその魔法はダサいって言われ続けてて、でも僕はかっこいいと思ってて、僕は誰にもわかってもらえずずっと一人だと思ってたから、初めてかっこいいって言われて嬉しくてつい泣いてしまった」


「そうなのか。わかるよその気持ち辛いよな」


「わかるのか?」


「あぁわかるとも、だって僕も陰の実力者に憧れてるもん」


 僕はそう言って、リュックの中にあるコートと仮面を取り出し着替えた。


「ほら、僕はこの姿で雷鳴の実力者ライトニングを演じてるんだ」


「いいな、そういうの」


 悪魔は、少し照れくさそうに言った。


「そうだろ?」


「なぁお前、影魔法を使って僕の影の中に入ることは出来るか?」


「まぁできるけど、それがどうした?」


「僕さぁ、魔王を倒す陰の組織のリーダー何だけど、僕の影に入って陰の実力者になる気はないか?」


 悪魔はライムの言葉を聞いて呆然としていた。


「お前魔将軍だけど僕と似てるなら、正直魔王が死んでもどうでもいいだろ? それなら、今ここで殺されるより僕を影から支える陰の者になりたくないか? 僕も似たものを殺すのは気が引けるんだ」


 僕がそう提案すると、悪魔は即答で返事をした。


「確かにありだな。お前は戦力が増えるし僕はお前に倒されずに陰の実力者を続けられる」


「あぁそういうことだ」


「それじゃあライトニング様の影に入らせてもらうぞ」


「いつでもどうぞ」


 僕が答えると、悪魔は僕の影に入った。


「これからよろしくな」


「こちらこそよろしく」


「てか、名前聞いてなかったな。名前はなんていうんだ」


「陰の者に名は無い……」


「そっか、ならお前はこれからディストラと名乗れ」


「了解した」


 ディストラは、低い声で返事をした。


「それで、これから僕はボスの間に行って冒険者達を助けに行くんだけどいいよな」


「もちろんです。もう私は魔王軍の配下ではなくライトニングを支える陰の実力者、ディストラですから」


 割と薄情者だな。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それからディストラと色々話しながら僕はボスの間にたどり着いた。

 そこには、白いオーラを身に纏っている白龍の姿があった。


「すっげードラゴンだ! それで……、あれが冒険者か。弱そうだな」


 ボスの間には、白龍にボロボロにされている冒険者が3人居た。


 一番前にスキンヘッドの筋骨隆々な男、その隣には長い金髪の剣士が立っていて、その後ろに魔法の杖を持ったピンクショートヘアの大人しそうな女の子が魔法の準備をしていた。


「くそっ……、こんな強いなんて聞いてないぞ!」


 スキンヘッドの男は大きな斧を支えにして膝立ちで白龍を睨んだ。


 あきらかに、冒険者達は白龍の圧倒的強さに苦戦を強いられていた。


「なぁディストラ、これから僕は雷鳴の猫王としてあの冒険者を助けるから手出しは無用だからな」


「了解です。ですがこのドラゴンは滅龍と言って、ドラゴンの中でも強い部類ですので気をつけて下さい」


「まじか。まぁ確かに今の僕はRPGの世界を逆走してるみたいなもんだし相手も最強クラスなのか。まっ、勝てるでしょ」


 ライムは少し体を伸ばして、滅龍を睨んだ。


「よし、それじゃあ殺さない程度に倒しますか」


 ライムは、滅龍が冒険者に向かってブレスを吐いた瞬間に雷鳴と共に姿を表した。


 「喰らえ、白龍! 『落雷之衝撃サンダーボルト・インパクト!!』」


 ライムが拳に纏った雷を白龍に放った為、ダンジョン内には爆音が響いた。


「何が起こった!」


 いきなりの音に冒険者達は戸惑っている。


「まじか、今の攻撃を食らってもほぼ無傷じゃん。これは楽しくなりそうだ! あっそうそう。君たちさぁ、僕が足止めするから逃げな」


 僕がそう言うと、冒険者のリーダーが尋ねてきた。


「貴方は何者ですか?」


 よっしゃー、聞いてくれた。


「我は雷鳴の猫王ライトニング。いずれ雷鳴の覇者と成る者」


 ライムは低い声でそう言った。


「そうなんですね。助けてくださりありがとうございます。一緒に戦いましょう」


 冒険者のリーダーはあっさりと僕のカッコつけポイントをスルーして話を進めた。


「いや、お前たちがいては本気を出せない。さっさとこの場から逃げろ」


 僕がそう言うと、冒険者リーダーは少し悩んでから仲間に指示を出した。


「よし、今のうちに逃げるぞ!」


 リーダーがそう言うと冒険者の一人の女の子が僕を心配して反対した。


「でもこの人が!」


「我の心配はしなくて良い」


 そう言うと、リーダーとは違う剣士が女の子の手を取り連れて行った。


「おいっ行くぞ!」


「死なないでくださいね!」


「わかっている」


 僕がそう言うと、冒険者達はボスの間から逃げていった。


「よし、邪魔者も消えたことだし、滅龍がどのくらいの強さなのか見せてもらおうか!!」

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