第15話 ドラゴンの肉はどんな味?
大陸の西にある大きな岩山に向かって走っていると、岩山の方にたくさんドラゴンが居るのが見えた。
「うわっ、ドラゴンがあんなに居る。ディストラ、なんでか知ってるか?」
「あの山にもダンジョンが有って、そのダンジョンの警備をドラゴン達と魔将軍の一人、ゴウエンに任せているんですよ」
「あの山ってそんなに重要なのか?」
ライムは、遠くを飛んでいるドラゴン達を遠目に走り続けていた。
「そりゃあそうですよ。あの山の頂上からはこの大陸のほとんどを見渡せるので作戦を立てる拠点にぴったりなんです」
「そっか。じゃあ、あそこに居るドラゴンの一頭を狩ってご飯にするか」
僕がそう言うと、ディストラは慌てて止めてきた。
「正気ですか? あの数のドラゴンとゴウエンを相手にしつつドラゴンを狩るなんて無理ですよ」
「いや、何も全員を相手にするつもりじゃないよ」
「だとしても、ゴウエンに見つかったらまずいですって」
「そんなに強いのか? ゴウエンって奴は」
まぁあ、強く無いと張り合いないからやめて欲しいけど。
「はい。魔将軍なので当たり前に強いですが、特にゴウエンは魔将軍の中でもトップクラスの強さなんです」
「そうなんだ。どんな戦闘スタイルなんだ?」
僕がそう聞くと、ディストラはゴウエンについて語りだした。
「ゴウエンは、生まれつき魔素が無く魔法が使えない魔族として生まれました。他の種族もそうですが、特に魔族の間では魔法が全てなので、魔法が使えないゴウエンは皆からひどい扱いを受けたそうです」
ディストラは、顔を曇らせながらそう言った。
「それに怒ったゴウエンは誰よりも強くなるために、血の滲むような努力で最強最硬の肉体を手に入れたそうです」
へぇ〜、努力の才能で強くなった系か。
僕、そういう奴の事嫌いになれないんだよな。
「血の滲むような努力で、最強最硬になったゴウエンの肉体は、筋肉は限界まで肥大化していて、身長も3mを超え、魔王様ですら致命傷を負わすことができないほどの強度なんです。そして力も素手で島を割ることができるぐらい強いんです」
ヤバイな。今の僕なんて、出来ても素手で地割れを起こせるレベルだぞ。僕もまだまだ修行が足りないな。
「確かに、それはヤバそうだな。まぁでも、一頭狩ってすぐ逃げるから」
僕はそう言って、魔力を高めていった。
「いざとなったら私も戦いますよ」
ディストラは、拳を握りしめながら僕の方を見て、力強くそう言った。
「そうか、ありがとうな」
魔将軍ゴウエンの強さを聞いて少し慎重になった僕は子供ドラゴンを倒すことにした。
「よし、それじゃあ。あの子供ドラゴンにするぞ」
僕は、群れから少し離れて飛んでいる子供ドラゴンを標的に決めた。
「はい」
獲物を決めた僕は、慎重に狙いを定め、魔法を撃った。
『落雷インパクト!!』
僕の放った魔法は見事命中した。
子供ドラゴンをゲットした僕は、子供ドラゴンを担ぎ、すぐさまその場を離れたようとしたが、すぐに周りにいた大人のドラゴン達が追ってきた。
「くそっやっぱ速いな。追いつかれそうだ……。てか多すぎだろ! 流石に怖いんだけど!」
仕方がない、一撃で仕留めるために結構魔素を使ったから残り少ないけどやるしか無い。
『雷撃ガトリング!!』
僕は『雷撃ガトリング』で壁を作り、なんとか追手を巻くことに成功した。
この時の僕らは、その様子を山の頂上に居たゴウエンが見ているとは知らなかった。
「あいつの魔素量ハンパないな! 一体何者なんだ!」
ゴウエンは、腕を組み、ライトニング達を見下ろしながらそう言った。
「次会ったら力比べを仕掛けてぇな! ガハハハハ!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ゴウエンに見られていたとは知らないライム達は、逃げ切ったことに喜び合っていた。
「いやー、お疲れ様です。ライトニングさん」
「本当だよ。流石にあの数のドラゴンに追われるのは怖かったなぁ」
追手を巻いた僕たちは、草原で子供ドラゴンを焼いて食べていた。
「それにしてもこの肉美味いな」
「そうですね。ドラゴンの肉は程よく脂もあって噛みごたえ抜群ですから。それで、ライトニングさん。これからどうします?」
「そうだな、とりあえずこの旅は、勇者パーティーに入るための旅だから、そろそろ本格的に最南端の村を目指さないとだめなんだよな。だから、明日にはラスファートの南側に行こうと思う」
「わかりました」
「とりあえず、今日のところは寝るとしよっか」
「そうですね」
「そういえばさぁ、ディストラに聞きたいことがあるんだけど」
「なんですか?」
肉を食べていたディストラは、肉から手を離して、僕の方に体を向けた。
「いや、なんで僕に付いてきてくれてるのかなって。だって僕に付いてきてたら今日は戦いはしなかったけど、これから先一緒に居たら、いつかは魔王軍の奴らと戦うことになるじゃん? そしたら、裏切り者になるからもう魔界に居場所がなくなるんだよ?」
僕がそう言うと、呆れた表情で答えてきた。
「なんだ、そんなことですか。前にも言いましたが、私は魔界に味方はいませんよ。魔将軍同士に仲間意識などありませんし、それに魔王様ですら私のことを便利な駒としか見てなかったですから」
結構重い話だな。
「そうなのか」
「はい。なので同族と戦うことにためらいはありませんので、必要とあらば私を使って下さいね」
「うんわかったよ」
ディストラの思いを聞いた僕は、安心して眠りについた。
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