第10話 世界の姿

 ラビッシュとホノカが村を出てから1ヶ月。

 魔王軍や来客などが来なかったので、僕たちはひたすらに修行や村の発展に尽力していた。

 ホノカ達には、1ヶ月立つ頃には一回情報整理の意味も込めて村に返ってくるように言ってある。


「そろそろホノカ達が帰って来る頃だな」


 僕がそう呟くと、ノアが話し始めた。


「そうですね。ラビッシュの方は魔界に行くのにあの大きな『エルーリ山脈』を超えないといけないので遅くなるかもしれないですが、ホノカはそろそろ返ってくるはずですね」


「ホノカ達が情報を持ってきてくれないと、動けないんだよなぁ。お母さんの本には種族の情報しか載ってなかったから、この星がどういう地形なのか知りたいんだよ」


 そんな話をしていると、ラビッシュとホノカが同時に帰ってきた。


「皆んな、ただいま」


「ただいまですー」


「二人共同時に帰ってくるなんて、偶然だな」


 二人が帰ってきたので、僕は他の4人を集めて会議をすることにした。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 場所は変わり、ライムの家にある会議室。


「まずは二人共おかえりなさい」


「ただいま」


「たっだいまー」


「それと、これから僕を呼ぶときは、基本的にライトニングって呼んでほしいんだけど」

「わかったぜ、ライトニング」


「りょーかいでーす。ライトニングさま〜」


 二人共飲み込みが早いって言うかノリが良いな。

 まぁ助かるけど。


「それでホノカはなんでこんなに遅かったの?」


 僕がそう聞くと、ホノカは理由を話し始めた。


「遅くなってごめんなさい。正確な情報がなかなか手に入らなくて」


「そうだったんだね。それでこの星の地形とかについてわかったことはあるか?」


「はい。まずこの星の地形についてですが、この星は一つの巨大な大陸とエルーリ山脈の向こう側に魔大陸があり、その2つの大陸の周りに無数の小さな島があります」


「次にこの大陸の地名などを説明します」


 ホノカはそう言いながら机に地図を広げた。


「ラスファートで手に入れた地図を見ると、大陸の真ん中に大陸を分かつ壁のように今私たちが居る『混沌の大森林』があり、更に北にはまた壁のように『エルーリ山脈』があります。そしてその先の大陸は全て『魔界』になっています」


「ありがとうホノカ。皆んな、北の地形は理解したか?」


「えぇわかったわ」


 アンナ達は地図を隅々まで凝視していた。


「よし、ホノカ続けてくれ」


「はい。そして『混沌の大森林』から南には草原が広がっており少し進むとラスファートがあります。その先にはいくつかの街や村があるだけで、西や東には特に地名のつくような場所はありません」


「ホノカありがとう。後、勇者についてはなにかわかったことはあるか?」


 ホノカは、机に広げた地図を丸めながら話し始めた。


「そうですね。まず勇者はラスファートにはいませんでした」


「そうなのか。じゃあどこに居るんだ?」


「それは、この大陸の最南端の村に居るみたいです」


「最南端? そこって魔界に一番近いところじゃないのか? というかなぜ魔王軍は最南端の地から攻めないんだ?」


「それは、1000年前に勇者パーティーの一人だったエルフが、自身の魂と引き換えに魔界の最北端と最南端の村の南に万物を通さない結界の壁を作って、北にはいけないようにしているからです」


 まじか。でもそれだと、魔界の北と最南端の村の南には1000年手つかずの空間があるということになるな。


 それに万物を通さないから勇者も近道はできないという訳か。そのエルフはよく思いついたなぁ。


「それじゃあ次、ラビッシュ。報告してくれ」


「了解です。今回わかったことは2つ。1つ目は魔王には14人の幹部魔将軍が居たようなのです」


「居たようです?」


「はい、何でも最近魔将軍の一人、忍びの将軍が突然消えたみたいです」


 えっ、まさかあいつが魔将軍だったのか?


「へっへぇーそうなんだぁ。まぁラッキーじゃん敵が一人消えたんだから」


 僕が誤魔化そうとするとアンナが話し始めた。


「忍びの将軍? あっもしかしてライトニングが倒した悪魔のことじゃないの?」


 なんで言っちゃうんだよー。誤魔化せてたのに。


 すると、暇そうにしていたツカサが急に立ち上がり近づいてきた。


「本当なのかライトニング。お前すごいなぁ」


「あっあぁ、多分そうだよ」


 僕は顔を引きつりながら話した。


「ゔっゔん。さぁ、ラビッシュ続けてくれ」


 僕がそう言うと、ラビッシュは手を上げながら元気よく椅子から立ち上がった。


「わかりました。それでわかったことの2つ目はさっきホノカさんが言っていた結界を魔王の息子が破ることが出来るということです」


「本当なのかラビッシュ!」


 僕は思わず大声を出してしまった。


 万物を通さない壁を破壊することができるのか。

 これは魔王の息子にも期待できるな。


「はい。ですが、魔王の息子もまだ正式な魔王になっていないのでまだ破ることはできません。しかし正式な魔王になって力が増せば壊せるみたいです」


「待ってくれ、なんで今の魔王は結界を破れないんだ」


「それは1000年前に勇者達が敗れる寸前に魔王の力の殆どをラスファートの地下に封印したからです」


 なるほど、ラスファートの地下には魔王の魔力とかが封印されてるのか。

 だからラスファートまで、1000年もの間侵攻できなかったのか。


「そうなのか。ラビッシュにホノカ、情報を集めてくれてありがとうな」


「こんぐらい朝飯前だよ」


「どういたしまして」


 会議を終えた僕たちは、各々の持ち場に戻った。


 だがホノカだけは聞きたいことがあった為、僕が引き止めた。


「ホノカ、聞きたいことがあるんだけど……」


「良いよ、ライトニング」


「あのさ、勇者は最南端の村に居るって言ってたけどさぁ。勇者っていつ旅に出るのか知ってたら教えてほしいんだけど」


「どうしてですか?」


 そっかホノカ達には言ってなかったな。


「それは僕が勇者パーティーに入りたいからだよ」


「そうなんですね。そういうことでしたら確か勇者は18歳になったら旅を始めると聞きました」


 18歳かぁ結構時間があるな。

 まぁ人間の子供だからそんぐらいの年にならないと魔王なんて倒せないか。


「教えてくれてありがとうホノカ」


「役に立てたみたいで嬉しいぜ」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 時は流れ、この世界のことをあらかた知ることができた僕らは周りのモンスターを倒しながら10歳になるまで時を過ごした。


「よし、やっとこの時が来たな」


「そうね。またライトニングが強くなっちゃうわ」


「フッ、魔王を倒すんだ。いくら強くなっても困らないさ」


 ノアは鼻で笑いながら強気に話した。


「そうだな」


「そうね」


「今宵、我らは最強へと近づく……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る