第6話 増えた仲間たち
僕が村を出てから3日が経った。
アンナの言っていたことが正しければ、あと少しで森を抜けられるはずだ。
だが、辺りはすっかり暗くなりお腹も空いていたので今日もこの森で夜を越すことにした。
「よーし、今日の狩りも絶好調だな」
僕は森を走り回り、2頭のイノシシを狩ることに成功していた。
「でも、流石に2頭も食べれないけど、襲ってきたからしょうがないよね。焼いて食べるぞ〜」
僕は薪に雷魔法を使い火をつけた。
僕がイノシシを食べようとしていると近くから大きな衝撃音がした。
「なんだ!」
僕は急いで音の鳴った方向に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
音の鳴ったところに着くと、ジャイアントウルフにサラサラの赤髪ロングでキラキラと輝いた赤い瞳のおねぇさんが襲われていた。
「この状況で救けたら、陰の実力者として僕の名前を広めてくれるかもしれないな」
そう思った僕は、用意していたコートと仮面を着けてジャイアントウルフを倒すことにした。
僕は雷鳴と共に姿を表し、魔力を指先に集中させた。
『エレキショット!』
僕は、ジャイアントウルフに近づき心臓を潰した。
「グギャャ!」
ジャイアントウルフは、気絶した事で地面に倒れ込んだ。
「ふぅー、上手く行ったみたいだな。おねぇさん大丈夫?」
僕はお姉さんの手を取り、立ち上がる手助けをした。
「えぇ大丈夫よ。助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。僕は、ライトニング。雷鳴と共に悪を狩る者。みんなによろしくね」
僕が言いたいことを言って、村に帰ろうと後ろを向くと、お姉さんが僕の腕を握り、引き止めた。
「ちょっと待って……」
「どうしたの?」
僕は立ち止まり、お姉さんの方に視線をやった。
「あっ、あのさ。私、行くところがないの」
お姉さんは、指をモジモジと動かし、下の方を見ながらそう話した、
「えっ? 人間の国に行けばいいじゃん」
「人間の国? あぁ、『ラスファート』のことね」
お姉さんは顔を上げながらそう言った。
「……あそこには行きたくない」
お姉さんは暗い顔をしながらそう話した。
「なんでですか?」
僕は首を傾げながらお姉さんに質問をした。
「あなた知らないの? 確かに、あの国は表向きには大陸一国土が広く、一番栄えている国として、明るいイメージが付いているわ」
お姉さんは顔を暗くしながら話しを続けた。
「でも、実情は親の居ない子供は奴隷になるしか無かったり、色々闇が深いのよ。そんなところに行きたくないのは当たり前でしょ……」
お姉さんは寂しそうな表情で呟いた。
まじか。想像とは違った角度でやばいのか。
今の年齢で行くのは諦めたほうが良さそうだな。
「ごめんなさい、知らなかったんです。そんな国なら行きたくないのも仕方がないですね……」
ライムは暫く悩んでいた。
「そうだ!」
お姉さんは、僕がいきなり大きい声を出したので、体がビクッと動き、驚いて僕の方に視線を向けていた。
「僕、こう見えて組織のリーダーをやってるからさ、僕が出す条件に従うなら着いてきてもいいですよ」
「ほんと? 条件は?」
「それは、組織の事と、組織のみんなのことを他に漏らさないことです」
「そんなことで良いなら、喜んで入らせてもらうわ。よろしくねライトニングさん」
お姉さんはそう言いながら立ち上がり、手を差し伸べてきた。
「うん。宜しく」
僕も立ち上がり、お姉さんと握手を交わした。
握手を交わすと、お姉さんの表情が和らいだように見えた。
「それと、さん付けしなくていいよ。歳上でしょ?」
「まぁ、多分そうだな」
お姉さんは、僕の顔や体を凝視しながら話した。
「後、ライトニングは仮の名前で僕の名前はライム何だよね」
「そうなんだな。じゃあ改めてよろしくな。ライム」
そう言ったお姉さんの声は明るく、どこかヤンキーっぽさのある喋り方だった。
「よろしく。えっとー……」
僕が困っているとお姉さんが名前を教えてくれた。
「そういえば名乗ってなかったな。私はホノカだ」
ホノカはニヤリと笑いながら、自身の顔に指を指してそう言った。
「ホノカって言うんだな。じゃあ、よろしくホノカ」
僕とホノカは、強く握手を交わした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから数分後、僕とホノカは、ひとまず僕が元いた場所に戻りご飯を食べることにした。
辺りはそよ風が木々の隙間を通る音が少しするだけで、他の音はほぼ無く、夜空にはきれいな星々と三日月が輝いていた。
僕が薪に雷魔法で火をつけ、僕とホノカは辺りを照らす暖かい炎を前に横並びで座った。
「いやぁー、ホノカが来てくれてよかったよ。僕一人じゃ食べ切れなかったからさ」
「私の方こそ、色々ありがとう」
「どういたしまして。そういえばホノカはなんでこの森でジャイアントウルフと戦ってたの? 今この森は危険なんだよ」
僕が質問すると、ホノカは複雑そうにしながら話し始めた。
「危険なのはわかっている。でも私はあいつを倒さなきゃいけなかったんだ」
「なんで?」
「私の村はこの森のすぐ近くで稀に魔物が来ることがあるんだ。もちろん返り討ちにすることができるぐらいみんな強かった。でもあいつは悪魔に操られていたんだ。悪魔に操られた魔物は桁違いの強さになる。だから、みんなあいつに勝てず、殺された。勿論私の家族も皆んな……」
そこまで話すと、ホノカは顔を上げ赤い瞳は光を取り戻していた。
「それで、仇を討つためにこの森まで追いかけてきたんだ」
なるほど、僕はホノカの復讐の相手を倒しちゃったわけか。
だから複雑な気持ちになってるんだな。
「なんかごめん」
「謝らなくていいよ。私ではどうせ勝てなかったから」
てか、悪魔に操られると魔物って強くなるのか、でもアンナでも倒せてたし案外魔王軍の戦力も大したことないのかもな。
僕たちは夜を越し朝には村に帰っていた。
「そういえば、ライムってなんでラスファートに行こうとしてたの?」
あっすっかり忘れてた。
ホノカなら知ってるかもしれないし聞いてみるか。
「僕がラスファートを目指してた目的は、勇者が生まれていないのかと人間の強さを確かめるためなんだけどホノカは知ってる?」
「うーん、人間の強さはどのくらいかはあまりわからないけど勇者なら生まれてるよ。まだ5歳だから戦えないけどね」
なるほど、勇者は僕と同い年か、確かに普通に考えて5歳で悪魔を倒すのは無理だもんな。
「教えてくれてありがとう。ホノカ」
「どういたしまして」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから3日かけて、ホノカと一緒に村へと帰ってきた。
時刻は、日を跨いでいないものの、深夜に近かった。
「あっ、ライム兄ぃちゃんだ」
「皆んなただいま」
「ライム。こんなに早く帰ってきてなにかありました?」
ノアは不思議そうな表情で出迎えてくれた。
「ライムおかえりなさい。会いたかったよー」
僕が少しの懐かしさに浸っていると、いきなりアンナが抱きついてきた。
「ウッ、苦しいよアンナ」
「あっごめんなさいライム」
アンナは、しょんぼりと金色の尻尾を垂らしながら僕から離れた。
ちょっと苦しかったけど、久しぶりにみんなに会えてよかった。
「あら、帰ってきてたのね」
ミズキは、あくびをしながらパジャマ姿でライムを出迎えた。
「おぉーミズキ、久しぶり。みんなを守ってくれてありがとうございました」
「良いのよ。約束だし」
ミズキの少し冷たい対応にライムが苦笑いを浮かべていると、ノアが話しかけた。
「ゔっゔん。改めて、おかえりなさいライム。それとこちらが貴方が居ない間に救けた獣人の皆さんです」
ノアが紹介した先には兎の獣人、狐の獣人、龍の獣人の子供達が大勢立っていた。
この獣人達が魔王軍に襲われていたのか。
いやぁー、ほんとに全部助けるとは、大したもんだな。
僕がみんなに感心しているとノアが3人を連れてきて。
「この3人が各々のリーダーを務める者たちです。ほら、自己紹介をしてください」
ノアがそう言うと、オレンジ髪のボブで耳がピンと立っているオレンジ色の瞳をした兎の獣人が前に出てきた。
「それではボクから。ボクはラビッシュ。高速移動が得意で風魔法を使います!」
ラビッシュは笑顔で元気よくそう話した。
ほう、ボクっ娘か良いじゃあないか。
次は黒目で尻尾や手などにウロコが付いている龍人が名乗り出た。
「俺様はツカサ、魔力はない!」
ツカサは、自身の胸に右手を叩きつけながら高らかにそう言った。
脳筋か。まぁ一人ぐらいは居てもいいか。
最後は、深海色の瞳に白髪ポニーテール。
毛量が多く、毛並みがフサフサでお姉さんなオーラ漂わせる狐の獣人が前に出てきた。
「わたくしの名前はユキネ、氷魔法を使っております」
ユキネはそう言いながら、お辞儀をした。
名前通りの魔法を使ってるのか。まぁそれは僕も同じか。
「自己紹介ありがとう。これからよろしくな」
ラビッシュ達と一通り挨拶を終えた僕達は、僕の家に一応作っていた会議室でサンダーパラダイスの今後について会議をすることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ライムはカーテンを閉め、ろうそくの灯りで自身の顔を照らした。
「それでは改めまして、これからよろしくお願いいたします。サンダーパラダイスの盟主ライムです。この会議では、ここに居る8人の村での役割を決めたいと思います」
ライムはそう言いながら、机に両手をついた。
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