第5話 いざ人間の国へ
「君の名前はなんて言うの?」
僕が質問をすると、青髪ロングで犬獣人の女の子が話し始めた。
「私の名前はミズキです。何故私が強いと思ったのですか?」
女の子は、冷たい態度で淡々と話した。
「フッフ〜ン、試してるつもりなのかもしれないけど、僕はちゃんと知ってるんだからね」
「何をです?」
「君のその髪色、染めてるわけじゃないんでしょ?」
僕がそう言うと、周りにいたアンナ達が一斉に喋りだした。
「えっそうなの!」
「では、何故髪が青いんですか?」
「おねぇちゃんそうなの?」
アンナとノア、そして周りの子どもたちは皆驚いた。
皆んな髪を染めていると思っていたらしい。
「あれ? みんな知らなかったの?」
「知らないわよ。だから驚いているんでしょ?」
「でも、染めていないとしたらどうして髪が青いんですか?」
ノアは、僕の方を見ながらそう質問してきた。
みんなが何故、ミズキの髪が青いのかを知らないとわかった僕は、得意げに説明した。
「それはね。獣人の特性で10歳になる時にその人が生まれ持った魔素の色に毛の色と目の色が変化するからだよ。そして毛と目の色が変化した獣人は、その属性魔法しか使えなくなる代わりに、魔素が大幅に増えてしかも魔素の減りがめちゃくちゃ少なくなるんだよ。凄いでしょ」
僕がみんなに自慢気に説明するとアンナが質問してきた。
「仕組みはわかったわ。でも村の大人達はみんな毛と目の色が変化したなんて言ってなかったわよ」
「そりゃそうだよ。だって毛と目の色が変化するのは自分の魔素が何属性かを知っていて10歳になるまでその属性魔法しか使ってなかった場合だけだもん」
僕は少し間を置いて話しを続けた。
「村の大人達はみんな自分の魔素の属性を知らなかったぽいし、自分の魔素と違う属性の魔法も普通に使えちゃうからね」
「そうなのね」
「うん。だからアンナには雷魔法しか教えていないんだよ。アンナの魔素は僕と同じ雷属性だから」
まぁアンナの髪が金髪になるのは嫌だけど、強くなるには必要なことだからな。
それにいつか髪色を変える魔法を作ればいいんだしね。
僕が説明し終わると、ノアが不満そうに怒ってきた。
「ちょっと待ってください。そのことを知っていたのに何故ボクに教えてくれなかったんですか! ボクもう全ての属性魔法を使っちゃいましたよ!」
ノアは、絶望したような表情をしながら、慌てて僕に言い寄ってきた。
「あぁ、ノアは大丈夫だよ」
「何故ですか?」
「だって、ノアの魔素は全ての属性の色をしてるから」
「「「えぇぇぇ!!!!」」」
僕の言葉を聞いた、ノアを含め周りの皆んなは、大きな声を出して驚いていた。
「ちょっと待って、ライム。さっきまでのあなたの話から推測するとそれってめちゃくちゃノアが強くなれるってことにならないの?」
少しして、皆んながまだざわついてる中、アンナが質問をしてきた。
「うんそうだよ。だからノアにはなにも教えなかったし。村のことも任せられたんだ」
「そうだったのか……」
そう呟いたノアは、おもむろに歩き出した。
「あれ? ノア、どこに行くの?」
「ちょっと修行をしてくる」
僕の話を聞いたノアは、嬉しそうにしながら森の方に歩いていった。
「ノア、急にどうしたんだろう?」
アンナは首を傾げて、不思議そうに言った。
「まぁ、あんまり気にすることはないでしょ」
そう言った僕は、話を戻す為にミズキに質問をした。
「それで、ミズキは多分水属性だよね?」
「えぇそうよ、私は今まで水魔法しか使ってこなかったの」
「ってことなので、ミズキはこの中で一番強いんだよね。だから僕は安心して人間の国に行けるってわけです」
僕は胸に手を当て、自信満々にそう言った。
「ハァー、わかったわライム。人間の国に行っても良いわよ」
アンナは、ため息を吐きながらそう話した。
「やったー」
僕は嬉しさのあまり、ジャンプしながらそう叫んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
みんなを説得してから1日が経ち、僕は人間の国に行く準備を終えていた。
「じゃ、みんな行ってくるよ」
「いってらっしゃーい」
「ライム兄ぃちゃん気をつけてねー」
「あぁわかってる。じゃあな」
僕は年の小さな子達の頭を撫でたりして、別れの挨拶をしていた。
「あっ、そうだアンナ、ノアそしてミズキ、村の皆と他の獣人は頼んだぞ」
「えぇ任せてちょうだい」
「任せろ」
「任して」
アンナとノア、そしてミズキは意気揚々とそう返した。
「それじゃ今度こそ行ってきます」
僕は、そう言いながらみんなの方に手を振って人間の国へ向かった。
みんなと別れた僕は、これから1週間かけて人間の国を目指す。
「いやぁー、この世界の人間はどんな暮らしをしてるのか楽しみだなぁ」
僕は、そんな事を言いながらのんびりと人間の国へ歩みを進めた。
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