組織結成編

第2話 サンダーパラダイス結成

 神の気まぐれで転生できる事になった僕、次に目にした光景は転生先のフサフサの毛並みをした黒猫の獣人の母と父が嬉しそうにしている姿だった。


 ガチで猫じゃん。


 そう思っていると、今までに感じたことのない不思議な感覚が体中を巡っていることにも気づいた。


 魔力だ!


 どうやら神の言っていたことは、嘘じゃないらしい。


 僕は飛び上がりそうになったが、赤ん坊の姿では母の腕からは離れられない。


 夢の転生ライフは少しお預けみたいだ。


 落ち着いた頃、もう一度あたりを見渡すと、魔法書やこの世界を知る事ができそうな本がいっぱいあった。


 どうやら母は脳筋獣人ではないらしい。


 この世界を知りやすくなった。


「あーと」


「あなた、この子が喋ったわ!」


「あぁこの子は天才だ」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 月日が流れ、ハイハイができるようになった。


 早速外にでてみよう。


 両親が朝ごはんを作っている隙に外に出た。


 今まで窓越しでしか見れなかった景色だ。


「凄え~、最高じゃん」


 思わず声が出た。


 見渡す限りの自然。そして周りを歩く猫の獣人達。どうやらここには猫の獣人だけが住んでいるみたいだ。茶トラや白猫など様々な種類の猫の獣人が街を歩いていた


 目に映る光景すべてが、僕の鼓動を高鳴らせた。


「こら! ライム。勝手に外に出ちゃだめでしょ」


 これからのことを考えていると、慌ててお母さんが出てきて家に連れ戻された。


 外の景色を見て、ますますこれからが楽しみになった僕はこの世界について調べまくった。魔法やこの世界の歴史はだいたい調べた。


 どうやら、この世界は1000年前から魔王がいて誰も逆らえないらしい。


 だが流石に老いには勝てないらしく、息子に継がせるつもりで、その息子を倒すために色々な所で争いが起きているみたいだ。


 まぁ僕的には、魔王の息子には長生きして欲しいけどね。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 5歳になった頃、僕はほぼ完璧に魔力を扱えるようになった。


 魔力だけで見れば、この村の獣人には負けないと思う。


 いつものように修行をするために森に向かっていると、木にもたれかかって座っている同い年ぐらいの女の子に会った。


 黒髪黒目でショートヘアの猫の獣人だ。


 僕は話すこともないし、その場を離れようとしたが少し考えるとあることに気づいた。


「これって幼馴染みを作れるチャンスじゃないか?」


 前世から幼馴染みの関係に憧れていた僕は思わず女の子に声を掛けた。


「あ、どうも初めまして僕はライムです」


「っ! ……」


 僕が話しかけると、女の子の耳と尻尾がピクッと動き、女の子は下を向いてしまった。


 どうしよー、僕コミュ障なのにお願いだからなにか喋って!


「あの貴方はなぜここに?」


 喋ってくれた。


 嫌われているわけではないと思いたい。


「僕は修行をしに来たんだ。君は?」


「私の名前はアンナ。気分転換をしに来たのよ。私の父は村長だから私も覚えないといけないことが多いの」


「ふぅ~ん、大変なんだね」


 そんなことを言っていると、村の方から悲鳴が聞こえてきた。


「キャー魔王軍よ!!」


「ウォー」


「グルル」


「大人の獣人は全て殺せ!」


 どうやら魔物達が村を攻めに来たらしい。


 僕達は、いきなりの悲鳴で耳が少し動いてしまっていた。


 ハァー。人間の時もいきなり大きな音がしたら反応したりしたけど、この耳だと余計に反応しちゃうな。


 慣れるまで時間がかかりそうだ。


「戦えるものはわしに続け!」


 僕達が村に戻っている途中、村長がそう叫ぶ声が聞こえてきた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「なにが起きたんだ!」


「みなさん無事ですか!」


 僕たちが村に着いた頃には、戦いはすでに終わっていた。


 魔物達の圧勝だ。


「子供はひとり残らず捕らえろ!」


 魔物達のリーダーらしき悪魔が命じると、魔物たちが家の影などに隠れていた子供達を連れ去り始めた。


 その光景を見ていたアンナは前に出て「なぜこんなことをするのですか?」と震えながら悪魔に尋ねた。


 すごい精神力だと感心していると悪魔が答えた。


「大人は抵抗されると邪魔なだけだが、子供はまだ弱いからな簡単に戦力にできる」


 要するに魔王軍の強化をするために来たらしい。


 それを聞いたアンナは怒り悪魔に向かって走り出した。


「アァァァア、よくも!! 全員殺してやる!!!」


 まずい、このままだとアンナが殺される。


 せっかく幼馴染みになれそうなのに。


 そう思った僕は、今まで隠していた力を使うことに決めた。


「落ちろ無数の雷よ……。『雷撃ガトリング』」


 僕がそう言うと、空から無数の雷が落ちてきて魔物達を一掃した。


 初めて無数の雷を制御できたことに嬉しくなっていると、子どもたちが親を失ったことで泣きじゃくっていた。


 どうやってみんなを元気づけよう。


 そうだ。


「君たち僕の仲間になって魔王軍と魔王を倒さないか?」


 僕がそう提案すると、子どもたちは頷いた。


「よし、じゃあ組織の名前を決めよう」


 ノリノリで考えていると、アンナが


 「何故楽しそうなの!」


 と怒りながら言ってきた。


 確かに、僕も親を無くしたのに、はしゃぎすぎたのかもしれない。


 反省しないと。


「ごめん。みんなを元気づけようとしていただけなんだ」


 そう言うと、アンナは申し訳無さそうに、


「ごめんなさい」


 と言った。


 ふぅー、なんとか誤魔化せた。


 安心していると、見るからにクールでイケメンな黒髪黒目の男の子が「それで組織の名前はどうするんです?」と尋ねてきた。


 僕は少し悩んだ。


 この選択は後々の僕の中二病活動に大きく関わってくる重要すぎるイベントだ。


 何故なら、組織の名は登場した時や、僕達の噂を人々が話す時に使われる組織の顔だからだ。


「よし決めた! 僕らの組織名は、『サンダーパラダイス』だ!」

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