第3話 雷鳴の覇者と成る者 ライトニング
サンダーパラダイスを結成した日の夜、僕はアンナに雷魔法を教えていた。
アンナ以外の子どもたちは、皆んなまだ魔力が少なかったのでアンナにしか教えられなかったのだ。
アンナだけでも魔力があって助かった。
流石に今の僕の魔力量だと、一人で連戦とかは無理だからな。
他の子どもたちには、村の修復作業をしてもらっている。
子供といえど獣人なので、人間の大人よりかは力があるのだ。
そう力だけは。
「ねぇー、できない」
「難しいよ~」
「ほら、ここをこうするんだよ」
ノアが他の子に家の組み立て方を教えていると、他の子が家の壁に使う木を壊してしまった。
「これ、壊れたけどどうすんの」
「お前が壊したんだろ!」
そこに僕が歩いてきた。
「おぉーやってんねぇ」
「助けてくださいよぉ〜ライムさん」
こいつはノア。クールな男の子で僕に組織名を質問をしてきていたやつだ。
村の中でアンナに続いて頭が良かったので、村の修復を任せている。
「わかったよ。手伝うって」
僕は、面倒だと思いながらも渋々協力することにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アンナに魔法を教え始めて1週間が経った。
村もだいぶ治ってきた。
ノアには感謝しないとな。
「入るぞ」
「入るわよ」
そう思っていると、僕の部屋にアンナとノアが入ってきた。
「ライム、これからのサンダーパラダイスについてなんだけど」
「僕らの力ではどう頑張ったって魔王には勝てないと思うんだ」
「だから、他の獣人や種族を仲間に加えるのはどうだ」
確かに、今の戦力では魔王軍と比べることもできないほどの戦力差だもんな。
「いい案だと思う。だが、どうやって入ってもらうんだ?」
「それも考えてあるの。まず、周辺の森に住んでいる獣人をサンダーパラダイスに加えるわ」
アンナが話し続けようとすると、ノアが割り込んで話し始めた。
「周辺の森には、まだ魔王城に連れて行かれていない子供達がいるんだ」
「そいつ等を助けて仲間になってもらえれば、魔王軍との戦力差も減らせる」
「ライム的にはこの案どう?」
確かに、この案なら仲間も増えてさらに敵の数も減らせる。
流石アンナとノアだ。
「いい案だと思う。早速今晩決行しよう」
「了解」
「やったー」
アンナは僕に褒められて嬉しそうにしている。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アンナとノアの作戦を決行するため、僕とアンナは魔物たちが魔王城に子供達を運ぶ進路に先回りしていた。
ノアには留守番をしてもらっている。また村が魔王軍に襲われたら大変だからな。
魔力が少なくてもノアならなんとかしてくれるだろ。
ついに決行する時が来た。
数はオークが10体、悪魔が1体だ。
「あまり大したこと無いわね」
「そうだな、でもあの悪魔には気をつけろよ」
「えぇわかってるわ」
アンナは元気よく頭を縦に振った。
「僕が悪魔の相手をする。アンナはオークを倒してくれ」
「任せて頂戴」
悪魔たちが僕らの下を通った瞬間、アンナが奇襲をかけた。
「グォ―」
「ギャ―」
流石はアンナ、木から降りた瞬間にオークを数体倒した。
僕も教えた甲斐があるってもんだ。
「よし、それじゃ僕も」
ライムは木から飛び降り、雷鳴と共に姿を現した。
「グォー」
悪魔の近くに居たオークが血しぶきを撒き散らしながら倒れ込んだ。
「何だ!」
ライムは、悪魔の死角から斬り掛かった。
だが、悪魔は間一髪でその剣に反応し、防ぎライムを吹き飛ばした。
「へぇーすごいね。君これに反応するんだ」
「がら空きでござる!」
悪魔は、体勢を崩したライムに懇親の一刀を振った。
周りに激しい衝撃音が響き渡った。
「ライム、貴方大丈夫!」
「大丈夫だよ」
すっげぇー、この悪魔僕より速いじゃん。
楽しくなりそうだな。
「久しぶりに本気を出そうか」
僕の口からは思わず笑みがこぼれていた。
「ハッ、獣人のガキが。威勢が良いだけでは拙者には勝てんぞ」
悪魔は、そう言いながら剣を逆手持ちに切り替えた。
拙者って忍者かよ。
暫く、両者は激しい剣の攻防を続けた。
「思ったより耐えるな。この悪魔」
「小僧、速さでは拙者には勝てぬぞ!」
「フッ」
「なにがおかしい!」
ライムが不敵な笑みを浮かべた後、再び両者の激しい攻防が繰り返された。
「いや、別に何でもないよ。でも、そろそろ終わりにしようか」
「何だと!」
ライムは、空高く飛び上がり、拳を振り上げ魔力を一点に集中させた。
「我が絶技をその身に刻め……」
ライムが魔力を高め始めた。
ライムの周りには雷が漂っている。
『サンダーボルトインパクト!!!』
ライムがそう言いながら拳を思いっきり地面に向かって振り下ろすと、雷が落ちると共に一回の雷鳴が周りに響いた。
悪魔は、ライムの技で地面に押し付けられて死にかけていた。
「クッ貴様一体何者だ!」
「あっまだ生きてたんだ」
ライムは服のホコリを払いながら、体制を立て直した。
「我は雷鳴の覇者と成る者。ライトニング」
僕がそう言うと、悪魔は息を引き取った。
「ふぅ~終わったな」
「ライム、あなたなら勝てると信じてたわ」
「おぉーありがとな。……痛ってぇー!」
「ライム! あなた本当に大丈夫なの?」
やっべぇ、威力をあげようと全魔力を拳に集中させたから、反動がでかすぎて腕が耐えれなかったか。
「もっと強くならないとな」
僕の右腕が負傷したが、なんとか犠牲者が出ずに終わったこの作戦。
僕とアンナは捕まっていた子供達を連れて、村に帰った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あっノア、二人が帰ってきたよ」
僕らの姿を発見した一人の、男の子がノアにそう伝えた。
「二人共おかえりなさい」
僕達が皆んなのもとに着くと、ノアはお辞儀をしながらそう言った。
「ただいま」
「ただいま戻りました」
「ライムお兄ぃちゃんその子達は?」
一人の女の子が僕達の後ろに居る子供達に指を指しながらそう聞いてきた。
「ん? あぁこの人達はな、今日から僕たちの仲間になる人達だ」
「へぇーそうなんだ。よろしくね」
女の子はそう言いながら、後ろに居る子達に笑いかけた。
すると、僕の近くに居た女の子が前に出て挨拶を返した。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
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