第44話 信用創造による管理通貨制度

ある銀行家の御子息が言っていた。


 「無利息融資は絶対に返済しなくてはなりませんが、利息ありの融資は元本、利息ともに返済義務はありません。」


 胴元総本山がそうであっても、末端の銀行職員は焦げ付かせたら会社に損をさせたことになるし、あまりに特定の融資先ばかり焦げ付かせていたら職権を悪用しての私物化あるいは背任行為だと言われて減給、処分、解雇は免れない。彼らは利息というもともと存在しない価値を回収する事だけを要求されているただの機械だ。それを回し続けたらどのような影響を与えるかまでオツムが回らない。

 実は銀行家オーナーは利息がもともと存在しない価値であることを知っている。知っているからこそ、彼ら視点から銀行は賤業と公言する。「職業に貴賎なし、私有財産の不可侵」の大原則から、彼ら自身以外が銀行を賤業と呼ぶのは「失礼なこと」であり「はしたないこと」、「行儀の悪いこと」であり、そもそも資金ショートは死を意味する資本主義社会において銀行に助けてもらわなくてはならない場面がある資本家たちはひたすら銀行に頭を下げ、お追従するので資本主義で作られたメディアや書籍では「銀行は賤業」などという言葉を目にすることはないだろうが、銀行家はそのことを自覚している。

賤業と自覚しながらも、いや、それでも求められているから続けなくてはならないのだとする根拠は大きく分けて以下の三点が良く見受けられる。


・充分な設備投資を出来るまで稼ぐ時間を売っている

・紛失盗難贋金の危険回避

・決済機能(送金)


 実は二番目と三番目は表裏一体なのだ。口座残高全部分の現金はどこの銀行も持ってない。はじめから持ってないから奪われない。でも持ってることにするために銀行間取引として送金が出来る。そして厄介なのが一番目の時間を売っているとする融資の利息だ。


 融資の申し込みがあったとき、銀行は元帳の預金残高と貸付残高に数字を書く。この瞬間口座残高という現金が発行される。現物など無くていい。ある程度以上の取引は銀行間の相殺決済でするのが当たり前だからだ。


 このエンティティを動かし続けると何が起こるのか?通貨は消えることなく数字が膨れ上がり続ける。それを調整する方法は3つしかない。


・通貨価値の相対化(物価上昇。いや通貨価値の下落)

・通貨増分⊿より取引実体を増やし続ける

・今まで値段のなかったもの、人の権利などを商品化する


二番目、すなわち成長が大きかった時代はうまく回ってきたが、限界に達して破綻した。そして通貨価値の下落を受け入れられない資本家どもは値段がないものに値札を貼り始めた。


原点回帰して、有利子融資は全部不良債権として諦めるしかないのである。

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