第16話 聖王の犠牲

 他方、女集落はタネ男を残して残りの男を捨てていたが、必然的に生まれてくるのはほぼ半々で、捨ててこいと言われて捨ててくる親ばかりではなく、第二、第三のレアが現れ、女集落の中に男が余りだした。男は一人でいい。また、選ばれた男も自分の地位を脅かす女集落内で生き残る男児たちを見つけては処刑していた。

 しかし、何もしなければ育つことができないところに、それでも育てた母親の存在を無視していた。その男がなにかえらいからハーレムの主になってたのではなく、出産時の身体的制約を踏まえて集落の発展のために要求リソース削減策として導入されたのに過ぎず主導権は女にあった。

 そこで起こったムーブメントが毎年ハーレムの主を処刑して新しい男と入れ替えるというものだった。任期一年のハーレムの主を聖王と呼ぶ。任期を終えた聖王は処刑し新しい任意の男児を聖王としてハーレムの主とする。これでも一夫一妻制よりはだいぶ男を間引き出来て、それなりに遺伝子多様性を確保でき、長い時代この制度は続いた。

 長い年月の間に農業技術も発達し、一年の節目を決め、その際に聖王の入れ替えを行う段取りとなった。入れ替えの儀は宗教的な儀式となった。冥界下りと聖婚である。冥界下りは旧聖王がいつの間にか冥界に行き、それを探して見つけてきたという建前で行われた。聖王の処刑を隠して知らないうちに居なくなってたので探しに行くという建前にするくらいの良識はあったようだ。

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