第17話 男社会による反撃

 せっかく産まれてきた生命を粗末にできない性分のレアが、捨てることを要求された赤子たちを養育したことが発端となり、本来ならば存在してはならなかった筈のビッチとサノバビッチとマザーファッカーたちからなる文明から疎外された集落が発生した。

 その集落こそ現代の西洋大陸文明の祖である。したがって全ての欧州人は王侯貴族平民すべてサノバビッチのマザーファッカーたちの子孫である。

 それ故に自身と世界を鋭い視線で深く思慮する、高度に精神性が高まった欧州の音楽家たちは、自身が認める優れた同志のことをファッキング・サノバビッチやマザー・ファッカーと呼ぶことがある。

 これは共通の祖先に対する尊称であると同時に、偉大なる共通の祖先の遺志を継ぐ霊的な当主――移ろいやすい安っぽい社会の変動に対して流されることのない堅い自我の核ハード・コアを持つ――、偉大な先祖たちに近い精神を保持して今を生きる存在であると認めているのである。


 野獣集団の男集落は何度も何度も女集落を襲撃した。そのたびに発生する文明から切り離され疎外された人々を巻き込み、平時でも自然発生する文明から捨てられた男児も根こそぎ巻き込み、99%の不幸な人々が1%の特権階級を数で圧倒し、一回あたりの襲撃では文明を持つ1%が99%を圧倒するが、何度も何度も何度も繰り返され、集落から阻害される負け組がまるっと男集落に落ち延びるしかない構造も手伝って、文明の利器を持つ1%の女集落に対して万に1も勝ち目のない99%は1万と1回の試行でついに女集落を陥落させたのである。

 なお、便宜上男集落、女集落と言っているが、どちらの集落にも男も女も居た。その構造と構造からくる人口比率が違うだけだ。

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