第18話 迫害される⊿ημήτηρ

  女集落はついに陥落し、散り散りになり放浪の旅に出ることになった。しかし暦や農耕という技術を神殿に残していたため、襲撃して勝ち取ったサノバビッチどもも、明らかに農作物の生産性が異なる秘儀を無視することは出来なかった。

 これが各地で二番目の地位に農耕の女神が残る背景である。ギリシア神話においてもゼウスの姉として⊿ημήτηρを置き、日本においても士農工商と農より上の職は存在するが農はその次に高い地位に置く。また、変則的ではあるが日本の神道においても、内宮外宮が形式的には内宮を上位とするが、都市計画も外宮周辺を積極的に開発し、すべての祭祀において外宮で先に行うといった事実上外宮を上位に扱う。

 支配下に置き、搾取の対象とはするが、その力を無視出来ないので神官を置き暦と農業技術を維持させた。しかし知識はほっといても広がるもの、全員が全員知らなくてもいい。なんなら民衆が自発的に正しく動けたら支配階級の存在意義がなくなってしまう。

 支配階級のみが直接アクセス出来る農業技術は非識字層に対するキラーコンテンツとして秘匿された。言うこと聞いたほうがよく実るぞ。言うこと聞かんやつは飢えて貧しくなるぞという脅しである。そして、男集落のサノバビッチどもは制圧した地域の一部の農耕神の神官だけを残して追放して、勢力を広げていった。追い出される⊿ημήτηρの神官たちは追われても追われても行き着く先行き着く先で農業と暦を現地人に教えて全世界に普及させていくことになる。

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