第19話 豐受大神

 ⊿ημήτηρを崇敬する人々は男集落たちからの迫害を逃れ、ゆく先々で農耕を伝えながら未開の地へ未開の地へと後ずさりしながら世界を転々としていった。その終着地点が丹後半島である。


 ここでは迫害こそなかったものの恩を仇で返すどうしようもない野蛮人たちに身一つで追い払われ、未開の地、竹野の奈具に住み着いた。ここが⊿ημήτηρの一派の終着点であり、はじまりの女神ポコココココ・ウホッ・ウホッホ(はじめのポコココココは胸を叩いて発音、ウホッホはゴリラの声で発音が始めた農耕を世界に普及させる使命はここで完遂された。そのときのお話。

――

 ⊿ημήτηρの一派が到着したところにはワナサと呼ばれる罠猟師が居た。罠猟師というよりは、職業が未分化で食糧を罠猟でゲットしてた類人猿だ。

「ウキキキー!」と見たこともないきれいな布が掛けてあるのを見つけたので咥えて穴に帰っていった。


 ⊿ημήτηρの集団は山に湧く温泉で湯浴みして出てきたら脱いだ服が一着なくなっていた。既に一度は文明が発達したところから追い出された集団だったので、服を着ないで人の前に出るのは恥ずかしいといった謎の社会的合意があったため、服を奪われた持たざるものとして集団から疎外されて、帰るに帰れなくなった。彼女のことを後の人々は食物と産業の創始者として豊受姫と呼ぶ。


 仕方ないので、服を作るために、また飢えを凌ぐために、農耕、養蚕、機織り、酒造りをスローライフ系異世界モノさながらに行った。それを見た類人猿たちは見様見真似で覚えたが、見様見真似でそれらを覚えた類人猿たちは群れを作ってまた彼女を襲い、彼女は追い払われた。


 真似してくれるのは構わない、感謝されこそすれどうして追放されるのか理解不能のまま、流れ流れて安住できる地にたどり着いた。その地を奈具という。その地名の由来は、「ここに到着してさめられました」と豊受姫がのたまったからだとされている。

 はじまりの女神から⊿ημήτηρを経て豊受姫に至るまで、農耕技術を発明し発展普及させてきた一連の神々を纏めて豊受大神と呼ぶ。

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