第38話 黒煙で曇天スターレス

 「正直な話、ありもしない排出権取引とか差し出させて金融商品化することを前提にした知財とか版権くだらない概念でっち上げて一喜一憂して、この大地に降り注ぐ太陽の恵みをポイ捨てして餓えと競合を激化させるだけのなんの役にも立たない社会なんかやめちまえ。ぶっ壊しても良いよ。」


 やはりルシフェルは悪魔だ……。


「なんか失礼なこと思わなかった?」


 いいえ。ただの感想です。


「これから向かう冬至の時代に向けて、可能な限り放射冷却を封じ込めて、太陽の恵みを効率よく取り込んで水に託し生命の循環を保存しなくてはなりません。」


 良いこと言ってるんだけどな……。


「だから化石燃料や枯木を燃やして温室効果のある炭酸ガスを出しまくって、夏は加湿してジメジメにして空をどす黒いスモッグで覆わなくてはなりません。」


 なんでそうなるんだろう?そこがどうしても繋がらないよ。


「こんなにも自明なことがどうしてわからないのですか?その判断に必要な知識は既にお持ちですよ。」


 うん、やっぱりルシフェルは悪魔だ。


「私を悪魔化する前に人間社会はやることがあったのではありませんか?これはこの惑星に住む、人類を含む生きとし生けるすべてのものを守るための最終手段としてわたくしに託され引き継がれた力です。社会がうまく機能してれば私の出番はなかったはずです。」


 人が愚かであるが故に天使の力を使わせることになり、その代償として美しい満天の星空と美しい雪景色は当分諦めなくてはならない事になった。

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