第36話 守護天使ルシフェル

「いや、でも暴力は良くないと……」


「あなたをこの境遇に追いやった制度を保持してきた奴等はあなたに暴力を振るってきたのではないですか?」


「それは…そうだけど……。」


「理不尽に抵抗する事は暴力とは呼びません。知性と呼びます。」


「無差別殺戮が知性とは……」


「あら?いつ無差別殺戮しましたか?わたしが奴等と同レベルの水準だと思われたとしたら心外ですわ。なにか奴等の使う似たものを連想したのでしょうがあんなクソといっしょにしないでくださる?」


えっ?爆弾投下じゃないのあれ?


「主にはもう少しわたしくしめのことを知っていただく必要がありそうですね。」


 先の冬の時代を乗り越えた、いわゆる「超古代文明」の生き残りのある氏族の当主であること、はじまりの女神から任務を与えられた氏族であること、その任務とは地球が受け取る太陽エネルギーを最高の効率で保存して全地域に適切に分配することで人類の絶滅を防ぐこと。その任務すなわち「光を輸送する者」という普通名詞がルシフェルで当主がその名を襲名するとのこと。

 人類はおろか生命にさえなんの関心も持たない神が牙を剥いたときに無謀を承知で立ち向かうゆえ、神の敵対者と呼ぶものもいるが、神の道理に従った場合は人類も生物も無に帰すからそれに抗う使命を帯びているということだ。そして太陽からのエネルギーが1%減るということは神の定めた道理でありそれをそのまま受け止めれば人類が全滅することでバランスが取れるが、それに抗い、生命全ては無理かもしれないが種を存続させるという任務を遂行するのだという。


 そしてさきほどの火球はモクモク玉といって晴天の空を広範囲にわたり曇天にすることで地表からの放射冷却を反射して地表に戻す超古代文明のアイテムで、物理的衝撃は多少あるがぶん殴られる程度のもので長期的には人畜無害であるとのことだ。いや、てっきり爆弾だとばかり……。

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