第26話 万死に値するPart1〜ス◯夫とジャイ◯ン〜

 「なんだって?!」


 トレヴァーは激怒した。

 メジャーデビューを果たした初ライヴの現場に向かうため空港で合流してバスに乗り込むとマネージャーから帰りの飛行機のチケットを渡された。他のメンバーと別のバスだと思ったらそういうことか……。

 バンドをクビになった。掴みかけた巨万の富も抱けるはずだった出っ歯の可愛い女もその片手にあるべき美酒もすべてが幻想に戻った。

 トレヴァーを乗せたバスはぐるっと回って空港に戻る。既に搭乗手続き済みの切符をボーっと眺める。往路はファーストクラス復路のチケットはエコノミークラス。早割75%引きで調達されたものだ。ビジネスクラス以上のみが使える待合室は使えない。横になれなくする排除ベンチにギターのハードケースの窪みを引っ掛け自らも腰をおろしてチケットをジーっと眺める。早割でも半年前から用意してないとこの割引にはならない。半年前からトレヴァーを追放する段取りは始まっていたということだ。それはメンバー加入一月目、このメジャー契約のオファーがあった当初ということではないか。バンドの前に突如現れた栄光への階段ははじめから自分の足元には存在しなかったのだ。教えてくれても良かったのではないか?半年も無駄な時間を過ごしてしまったではないか。知ってたら違った身の振り方もあっただろうに。


「一つのバンドに二人のトレヴァーは要らない」


大手レーベルから派遣された新米マネージャー氏の言葉である。


「だから、対抗してもとのバンドを超えるバンドを作るというアングルで君には新たに別のバンドをゼロから作ってもらう事にした。これは手付金だ。」


そうして手元には100万円と記された小切手が渡されている。


全てはマスタープランの一部だったのか。

ふざけるな 彼らとじゃないとダメなんだ。

1st mistake, NO MORE MISTAKE!


手付金は全部ドラッグと酒に消えた。

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