ONCE AND FUTURE LADY.

第31話 引き継がれた使命

 悪魔の挽臼帝国資本主義に追い詰められ、何もかも失い極寒のなか朦朧とする意識でオレは神に祈りを捧げた。

 すると意識が飛び、雄雌二頭のゴリラが目の前に現れ胸をドラミングしてポコココココと会話を始める、そして二頭で見つめ合うと、雄ゴリラのほうがポンっと肩を叩く。

 そこで意識が戻った。今のはいったい何だったんだろう?祈ったのは神に向かってだ。ゴリラに向けたつもりはない。しかしそこに唐突にゴリラが現れたということは、あのゴリラには何か意味がある。人は想念で現実に存在しない見たいものを見てしまう事があるが、ゴリラを見たいとは全く思っていなかったので、ゴリラの登場は想いや幻覚ではなく、外界からの客観的な事実として起こったことなのだろう。

 いずれにしても二頭のゴリラを前にして怖いという感じはしなかった。むしろ育った孫を愛でる祖父母のような、そういったなんとも言えない無償の愛のようなものを感じた。

でも相手ゴリラだしな〜。

 神に祈りを捧げて何故かゴリラが登場してポンっと肩を叩かれたなんてお笑いでしかない。恥ずかしいから今あったことは墓場まで持っていこう。もしくは何もかもうまく行って先の心配が要らない時代がやってきたなら酒の肴としてネタのひとつにはなるだろうか。そんなことよりも今は食糧難と寒波の中生き延びることだ。墓場というかストリートの片隅に積み上がるその時は近い。

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