第24話 至上の愛は死なないPart4 〜追求(Pursuance)〜

 目標を見つけたクリスが故郷に戻ると、花束を抱えた少女がおかえりなさいと出迎えてくれた。この少女とは何回か一緒に仕事をした事がある。その時々に大流行りのシャンソン歌手を片っ端から小馬鹿にしてからかうようなふざけた歌ばっかり歌ってた少女だった。紛れもないイロモノ歌手だったのだが、二年の月日は少女を大人の女性にしていた。今の彼女はイロモノではなくて色っぽい。


 心境的な流れに流されたというのもあったのかもしれない。二人は結婚した。この少女とはお互い持っている何かが共鳴した。デメトリアにはぶん殴ってくるような衝突や影響力があるが、響き合う関係ではなかった。もちろんヨハンの遺志を継ぐという崇高なる使命に目覚めさせてくれた事は感謝している。


 このヨハンから引き継いだバトンを一対一で次世代に渡すのではなく増やしてばら撒くのだ。そのためには核となる雌雄一対の発信源が不可欠なのだ。


 二人を核にしてありとあらゆるジャンルのミュージシャンとコラボしてその隙にヨハンの仕事を引き継がせてる。本人たち埋め込まれた自覚ないけど確実に種を植えている。その後彼の祖国にいるミュージシャンで彼らと演ったことがない者は一人も居ないと言われる。中にはかつて奥方に歌で小馬鹿にされてネタにされたシャンソン歌手も機嫌よく彼らとコラボしている。

 種が芽生えたアーチストとは別ユニットを立ち上げてインプロヴィゼーションのアルバムをこっそり発表して、華やかな表向きの活動でクリスのファンになったリスナーが勢いで間違って購入して「なんだコレ?!」と驚く事になるのはよく見かける光景だが、インプロヴィゼーションがやらねばならぬ使命であって華やかな活動はその種蒔きにすぎない。

 

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※この物語はフィクションです。なんか聞いたことある話だとしても偶然です。実在の人物、団体、地名とはなんの関係もございません。

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