第22話 至上の愛は死なないPart2 〜承認(acknowledgement)〜

 どうしても受け入れられないヨハンの死がだんだんと現実味を帯びてきた。かつてヨハンと行動をともにしていたマイルスのステージにも彼がいない。見えないだけで居るはずだと探すがやはりどこにもいない。


 ヨハンが晩年リスペクトしてると公言していたオーネストのステージにも……目と耳を更にして探すがヨハンの影も形も見つからなかった。


 やはり本当にヨハンの魂はこの世を去ってしまったようだ。クリスはヨハンの姿を求めて各地を放浪するが、どこに行っても彼のヴァイブスは聴こえてこなかった。


 クリスは既に名人としての誉れが高いので放浪中にカネの面で苦労することはなかった。ヨハンの霊魂が現れそうな場所を見つければ、その地のバーや楽器店に加入希望のビラを貼り付る、世界中どこに行ってもその日のうちに仕事があった。どこに行ってもヨハンの面影とヨハンの音はなかった。

 目標を見失い目は死んでいたが仕事は必要に迫られて継続することになった。


―――

 古代ローマの故地であるイタリアを放浪中、現地のバンド、「イ・レベッラ」で歌姫をしているデメトリアという女性と懇意になった。トリノの地下ライブハウスでの共演以来のくされ縁だ。何故かゆく先々で対バンであったり偶々同じバンドの助っ人で入ったりとご一緒する。


 今日は街で評判のケーキ屋さん「マルコーニ」で新作スイーツ発表の景気付けの演奏にお呼ばれしてクリスは炸裂するドラムを、デメトリアは咆哮をお見舞いした。観客は呆然としてるが、お互いに溜めに溜めた何かを全身全霊でぶつけ合った高エネルギー体がそこに現出していた。もはやそこにお菓子の売り出しといった目的はどこにも無かった。


「おつかれさま〜!」


 ひと仕事終えて、デメトリアと酒を煽る。ジャズメンの酒はもちろんバーボン・ストレートだ。もともと酒に強くはないクリスはすぐに泣きだし、デメトリアにヨハンへの想いを吐露する。

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