第12話 超古代文明の成熟と衰退

 はじまりの女神ポコココココ(←胸をドラミングして発音する)・ウホッ・ウホッホが始めた人類の歴史は、一度高度に熟成したが、たったふたりの担い手を残して絶滅した。いや、正確に言うならば一度ではない。2万年周期でこの惑星にやってくる冬の時代を乗り越えられる者は毎回少数であり、それを乗り越えるための叡智の蓄積を2万年という短い期間で実現することは不可能だった。


 冬の時代は地球が太陽の周りを楕円軌道で公転することで起こる。公転は一年周期なのに何故2万年周期で冬の時代が来るのか。紛れもなく1年の間に地球は太陽の周りの楕円軌道の近地点、遠地点を巡るし、毎日自転して朝が来て夜を迎える。


 なお、この小説が執筆されている現在は当代の文明が猶予まで1万年を切ったばかりの夏の時代である。夏の時代において近地点を通過するときは1月だ。1月は北半球において一日の日照時間が短く、南半球において長い。南半球は海面面積が大きく、北半球は陸地が多い。


 太陽から地球に降り注ぐエネルギーの量は近日点と遠日点で数%異なる。このエネルギー量は膨大であり、人間から細菌まですべての生命活動と気象現象の源がこの太陽照射によるものであることは論を俟たない。


 海面はやや光を反射するとはいえ、基本的に光を吸収し熱にする漆黒で、太陽のエネルギーを効率よく受け取るのは太陽に海面を向けている事。水はありとあらゆる物質の中でも極端に熱容量が大きく、その大きな胸元にあますところなく太陽の恵みを受け取り、中に生きる生命を育む。


 最大のエネルギー照射を最大の効率で受け取れる時代が夏の時代、生命が謳歌する活き活きとした時代で、折角の近日点を効率よく受け止められないタイミングで通過してしまうのが冬の時代である。


 先人たちが、光明神と地母神、そして地母神の第一の眷属たる水神を特別に尊いものとして伝えてくれた事には意味があった。「俺たちは絶滅寸前まで行っちまったが次こそしくじるんじゃないぞ……」と。

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