第6話 横取り特権階級の堕落
食べる分とは別に種籾を残すため、共同体ではその年のはじめの籾を食べる分とは別に保管する決まりを作った。
それは次の年に生命を繋ぐ種籾。食べる分ではない。そしてそれを徴収、管理する家系が固定化して特権階級化するのに10年も掛からなかった。当初はそれでなんの問題もなかった。
天文学を修め、暦を管理、農法、治水の研究開発を試行する。収量を増やすための知的労働が神官の務めであった。元祖インテリである。インテリは学位学歴マウントをとってふんぞり返るための「身分」ではなく、環境整備や手順の明確化を通じて闇雲にやるのよりも同じ労働に対して多くの収穫を得られるようにしたその差分⊿が収入源である。
しかし、慣れてくれば誰もがその効率の良いやり方を自ら実践できるようになるのと同時に、そもそも改善の余地がなくなっていき、彼ら功績として評価される⊿は時間の経過、時代の進化に伴って少なくなってくる。
本来ならば、その仕事は終わったのだと農作業に戻るべきだが、黙っていても共同体から不労所得が発生する身分は実に居心地が良い。
そこで彼らはそれぞれ一計を案じた。あるものは、定期的にわざと成果であるインフラを破壊し再度構築せざるを得なくし、あるものは、農民たちをペテンにかけて自らの特権を正当化し、あるものは同調圧力を演出し、あるものはありもしない債権を農夫たちに主張して、それぞれ特権階級を維持した。王侯貴族の名家の祖であるがただのコソ泥である。
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