第5話 霊継ぎ(ひつぎ)
穀物のように食べる部分が種子でもある時、それは通年保存ができるというメリットでもある反面少し困ったこともある。それは次の年の種でもあるので、全部食べてはならず次に育てる種とする分を必ず残さなくてはならない。しかし空腹は待ったなしでもある。だから共同体を運営する際は絶対に手を付けない来年のための種を残さなくてはならない。それが初穂であり神聖不可侵なものなのだ。他の粒と違うかというと何も違わない。一定量残す事が何よりも重要であるというだけだ。
種籾を食い尽くす事は絶対にあってはならないし、それを防ぐためには人間を間引く事すら正当性があったであろうことは想像に難くない。種を継げなくなった共同体は人間の共同体としての要件を満たさず、次の年には野獣に堕ちることが決定事項となるからだ。
そうした思惑で、神殿や政府が税として人々から徴税を始めたんだろうなという気がする。しかし保存用の種籾と食用の作物何かが違うわけじゃない。そうして働きもせず他人の成果をあたかも必要があることのように奪う者たちが現れる。そしてまともに働くより時間も労力もあまる。そもそもの過ちは、このような詐欺師に種籾の保存を委ねてしまった事にある。
そこからの人類史3000年間は、詐欺師たちが如何にその嘘を隠し、追及を逃れ、正統性をもって彼らを糾弾してきた者たちを殺戮するかに費やされた。なんたる時間と人命の無駄遣い!
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