第17話 アウトレットっていいよね。作者は最近良さが分かってきました。
「おはよ~」
有馬はふあ~と眠そうにあくびをしながら伸びをしている。
「ん、おはよ」
なんか今日眠そうじゃない? お昼頃からアウトレット行くけど、大丈夫そ?
「心配されなくてもちゃんと7時間寝てるから。最近寝る時間が少なくて、寝足りないと思ってるだけだから」
「なんで寝る時間少なかったの?」
「んー。ちょっとこの前おすすめしてくれたラノベが面白くてね。読んでたらつい時間が経っちゃって」
「いや分かるけども! ちゃんと寝ようね」
「お兄さんブーメランって知ってる?」
「イヤァナンノコトダロウナァ」
「ていうかさ~なんで私が空くんの考えを読んでるってわかったわけ?」
「え、何となく」
「え、なんでちょっと不機嫌なんすか?」
「知らな~い。自分で考えてみようね。鈍感ヘタレ主人公君」
……いや俺ラノベの主人公じゃないし。
お昼前、俺は早々に準備を終わらせてソファでスマホをいじって時間を潰していた。
「ねぇねぇ空くん」
俺は声の方を向くと、クリーム色のニットに白いレースのロングスカートを履いている有馬が後ろで手を組んでくるんと一回転した。
「どうかな~?」
俺は言葉が出なかった。強いて言うならあ、ぶっ刺さる。丸メガネショートボブからのフェミニンコーデは刺さる……ぞ。一旦血反吐吐いて倒れていいかな?
「ふーん感想もないんだ」
「そんなことないよ! たださ……」
「……ただ?」
「オシャレしてる日向が凄い可愛くて見とれたって言うか、似合いすぎてて言葉が出てこなかったんだよ」
「まぁ及第点かな~。そういうこと言えるなら見たらすぐ言って欲しいけどなぁ」
「分かりました。ていうかメガネ変えた?」
「あ、気づいた?私メガネ3つあるんだけどさ、やっぱ丸メガネがしっくり来るんだよね。あと今回のコーデにはこの色でしょ」
「すごい似合ってるよ」
有馬が楽しそうでこちらも思わずニコニコしてしまう。
「……ありがと。ぁ、あの準備もう少し時間かかるからもうちょっとだけ待っててて」
俺はいいよ~と答えて自分のスマホに視線を移す。
「いやぁ、可愛すぎてアニメのメインヒロインとかだったらこの子オレの嫁だからとか勝手に言いたくなるわ」
有馬の部屋からなにかぶつけた音がした。
「え、有馬大丈夫?」
そう声をかけると大丈夫~と帰ってきた。ほな大丈夫か……?
という訳で電車を使って久しぶりにアウトレットに来たわけなんですけど、やっぱ週末だから人多いよね。
「やっぱり週末だから人多いね~。ていうか空くん。お昼ご飯どこで食べる?」
「フードコートとかどうかな? って思ってたけど人多そうなんだよな。ていうかどのお店があったか忘れちゃったからあとで地図見よ」
「人が多いのはどこも同じだと思うよ~だって週末だし。食べたい物とかないの?」
「食べたい物ね~。回転ずしとか食べたいな」
「お、いいね! じゃそうしよっか」
俺の隣をるんるんで歩いてるワイの同居人可愛すぎる件について。告白をないがしろにしたのを余計後悔してるよ。
「あのさ、空くん」
後ろから声をかけられる。さっきまでとなり歩いてたのにいつの間にか俺の後ろにいるんだけど。歩くの速かったかな。
「ん? 何?」
「こうやって歩いてたら、カップルみたいに見えるのかな」
俺が振り向くとそう言った。
「見えるんじゃない? 知らんけど」
「なんでそんなにフラットに答えられるわけ? 何か、もっと恥ずかしがったりさ~感情をあらわにするような話題だと思うんだけど!」
なんかぷんすかしてる可愛い。
「これが大人の余裕ってやつだね」
「いやネタに走られても困るんだよ。あとメガネクイッじゃないし。だっさ」
「なんかたまに返答の切れ味バグってない?」
それくらいしないと分からないじゃんと一蹴される。う……よく俺の事をお分かりで。
「結構真面目にさっきの質問に答えると、そう見られても俺は良いからかな。いやぁ、お洒落してる有馬がいつも以上にすごい可愛くてね。これはまさに俺のよ──ゲホッゴホッ」
言い切る前に急に背中を叩かれ思わず咳き込んでしまう。
「いや、急に背中叩かないでくれない!?」
「それ言うんだったら、大きめの声で言わないでくれない?」
「いや言うでしょ。オタク言葉っていうかスラングっていうか」
「でも言われる側の気持ち考えて欲しいな」
「……すいません」
「なんで謝ってるの? 早く行こお昼早く食べないと荷物持ち兼ATMが最大限機能しなくなっちゃう」
そう言って俺の手を取ってスタスタと先に進んでいってしまう。
「ATM……? やらなくていいと言っていた筈では???」
回転寿司を出たあと洋服を見る有馬について行ったら、試着の時にどっちがいいか聞かれまくって俺はひたすら悩んでいた。いや、もとのそ素材がいいですやん。そんなんどっちが似合う?って聞かれたら悩みますやん。結局少しくすんだ赤色のセーターとか冬物裏起毛のジーンズとかを買っていた。
「普段から洋服に結構お金使うの?」
ふと気になったので聞いてみた。ちなみに両手には計3つ紙袋があって意外と重量がある。あとATMの責務はちゃんと聞いたらさすがに無いよ~と笑って返された。いや別に出しても良いんだよ? って言ったら、なんか好きなった人に貢ぎそうだから怖いなぁ。私そういう人じゃないけど。と返答が来てこっちがドギマギしてしまう。
「自分が気に入れるような自分になるために努力してるよ。だからファッションもメイクも必要な分だけ使っちゃうかな~」
「そういう自分のためのお金の使い方って良いよね。精神的に無駄じゃないからさ」
「ホントそれ!自己肯定感上がるしね。空くんはなんかそういうのある?」
「俺は~小説買ったり、ゲームするための周辺機器買ったりかな。買う頻度はそんなに多くないけど1回でそれなりの額が溶ける感じ」
「あーそういうタイプか。ちゃんと貯金はしてる?」
「そりゃもちろん。お金が無いってどこか安心できないし。ていうかもう15時か。早いね」
「あ~もうそんなに居るのか~。どこか行きたいお店とかある?私の買い物付き合ってくれたし一緒に着いてくよ」
「行きたい店ね~。バッグ欲しいんだけどいい店あるかなぁ」
「なんか服買いたいの?」
「うん。その、大学生になってからやっと見た目に気を使うようにし始めたんだけどさ、今ボディバッグをメインで外出の時に持っていってるんだけどね、ショルダーバッグが欲しいのよな」
「そのバッグ結構良いけど、確かに今日の服装にはカジュアルすぎるかもね。じゃぁちょっと着いてきてよ」
そう言って有馬は手を差し伸べて俺の方を見る。
俺が反応出来ずに固まってると、ほらっ!と声をかけられて俺は彼女の手を取る
「お昼ご飯食べて眠くなっちゃったの?」
「いやそんなことないよ」
笑いながらそう言われて少し恥ずかしい。いきなり手を差し出されても取れないっす。
ふーんそうなんですか~。と彼女は言った後ここに来た時と同じく俺はまた楽しそうに彼女に手を引かれて移動を始めた。
「トイレ行ってきていい? 先に入ってても良いし待ってても良いし」
「分かった~先に入ってるね」
お昼食べすぎたのと普段運動しないのに歩いたり走ったりしたせいだわ。運動不足どうにかしないとな。
「さーて、空くんはお手洗に行ってるし先にショルダーバッグ探そっかな。そのあとレディースも見よ~っと」
私はお店に入ってお目当てのものに目星をつけ始める。色としてはどれがいいんだろうなぁ。ショルダーバッグだったら無難にベージュとか黒とかがいいけど。特に今日は黒と明るいグレーのボーダーのセーターベージュのチノパンだし、それにどの色でも合わせやすいからなぁ。ていうか今日メガネかけてるの初めて見たけどキリッとしてカッコいいんだよね。
「彼氏さんにあげるもの探してるんですか?」
「ぅわぁ!」
いきなり後ろから話しかけられたからびっくりしたぁ。この店員さんのショートポニー可愛いなぁ。全く関係ないけどね。
「すいません。すごい楽しそうに見ていらしたの、思わず話しかけていまいました」
「あ、いや。大丈夫です。私そんなに楽しそうでしたかね?」
「えぇ、ニコニコしながら真剣に選んでるなぁと見えましたよ」
「あ、そうですか──」
「有馬戻ったよ~」
空くんが戻って来るのを見るとスーッと店員さんが引いていく。
「店員さんにどれがいいのか聞いてたの?」
空くんが商品を手に取って周りを見たり中を見たりしながら質問を飛ばしてくる。
「そういうわけじゃなかったんだよ。むしろ話しかけられたんだよ」
「え、めっちゃ驚くやつじゃん。彼氏さんへのプレゼント探してるんですか?とか聞かれた?」
「え? 見てたの!? 酷すぎない???」
「いや当てずっぽうで言っただけなんだけど」
『彼氏さんね~そうなれるといいなぁ』
じゃ告って欲しいなぁと思いつつ、そうなれると良いなぁは半々くらいなのなぁとも思っちゃう。結局今日のデート通してわかった事はやっぱり空くんのこと好きだし、もっと色々なこと知りたいしもっと一緒に居たいなぁって思ってることだよね。
「あ、これにしよ~。有馬どう思う?」
「良いんじゃない? ていうかさっき私が見てたやつじゃん」
「いやぁセンスあるなぁって思った」
「褒めても何も出ないよ」
「照れ隠しは出てるじゃん」
「うるさい」
「じゃ買ってくるね~」
そう言ってレジに向かったと思ったら
「あ、ごめん荷物もっててくれない?」
と言って戻ってきた。忙しい人だなぁ。
「わかったわかった。じゃ外で待ってるよ~」
「いい買い物したな~」
駅まで出ているバスの中で有馬がそう呟いていた。
「ごきげんだね」
「そりゃぁ欲しいもの変えたし、なにより久しぶりにこういうところ来たから気分がそれだけで上がるんだよね。空くんはどうだった?」
「俺も楽しかったなぁ~。こういうところって高校の時の友達と来た以来だしさ、あと単純に有馬と二人で来れたの結構うれしかったりするんだよね」
「あ、そうなの? そんなに私と一緒にいるの好き?」
「そりゃもちろん。この前喧嘩した時は早く仲直りしようといろいろ考えるくらいには焦ってたんだけどね。こうやっていつも通りの対応とかだと安心するというか落ち着くんだよね」
「ふ~ん落ち着くんだ。どこら辺がそう感じるの?」
「え~説明難しいんだけど」
「してください」
「……はーい。なんていうんだろう、会話のテンポ感とか、雰囲気とか。とにかく全部が落ち着く。変に緊張しないんだよね」
「そうなんだぁ」
有馬はあくびをかみ殺しながら返答をしていて、
「眠いなら寝ててもいいよ。言うて20分も寝れないけど、何なら電車乗ってるときの方が寝れるけど」
「うん。寝るから荷物見ててね」
そう言って有馬は俺の左腕を抱き枕替わりにして、肩に頭を乗っけて、ベストポジションを探すために少しもぞもぞした後
「じゃ、おやすみ」
耳元で眠そうにささやかれた。 ちなみに現在俺の血液沸騰中ね。はぁ……。心臓がいくつあれば持つんだろうなぁ。
そう思って俺は有馬の頭を軽くなでてお疲れ様。と言った。
ん? こんな会話聞かれてたら絶対バカップルだと思われるやんこれ。
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