第1話 大惨事の学園祭

 俺の名前は京都空みやこそら。今年の四月に大学生になったばかりで、しいて特徴を言うなら身長が一六五くらいの身長が低めな男性だということくらいかな。

 俺はふわぁと一つ欠伸をしながら伸びをして感覚が完全に覚醒するまでのルーティーンを終える。ありがたいことに俺の体は目覚めは良いらしいから朝寒くない限りはすっきり起きられる。寒い時の布団の引力には抗えないんだよなぁ。まだ一〇月なのが救いだよホントに。

「それはともかく、今日は文化祭か……。俺は別にサークルに入ってるわけではないし、出し物を何かするわけではないから別に行きたいわけないんだけどなぁ。」

 そう不平不満という名の独り言をこぼしつつ、文化祭に出てレポート提出なとか言う謎課題のために行かなきゃならない。9時から開催式だけど現在時刻は六時。早起きした理由は推しのVtuberの配信を見て今日も一日頑張る気力をもらうためだ! 推しがいる生活はいいゾ。

 配信を見ていたら開祭式が始まっていたので急いで自転車に乗り大学まで吹っ飛ばした俺は駐輪場のいつもの場所に自転車を止めて、正門を通り抜けていく。


 大学に着くと入り口では顔の整った、身長は大体俺と同じ165センチくらいの男が実行委員と書いてある上着を羽織ってカウンターをカチカチと入場者のカウントをしている。

「おっす。浅田は実行委員だから大変だなぁ」

 俺は笑いながら実行委員に入っている友達の浅田あさだに言う。

「ほんとだよ。本来は2人態勢のはずなのにも片方の人がお腹壊したって言ってトイレ行っちゃったんだよね。今んところ1時間以上立ちっぱなしだよ。終わり終わり。俺の脚ぷるぷるし始めちゃう」

 朝からげんなりした声で浅田が言う。

 俺はそんな友人にあとで屋台でなんか買っておごるから頑張れと言って、学内に向かう。

 メイン会場を見た俺の感想は、はえぇ、装飾に時間かけたってSNSで言ってただけあって凝ってるなぁと思った。ステージがよくロックフェスとかである鉄筋を組み合わせたような設営ステージになってて、その周りの飾りはおそらく自作だし、ライトや音響周りもレンタルだろうが設備が整っている。すげぇ。これが大学の文化祭か。高校の文化祭の時もなかなか規模が大きくて驚いたが、それ以上に衝撃を感じるわ。さすが大学って感じがする。メインステージの脇には、各サークルや、ゼミが屋台を出していて、焼きそばやお好み焼き、綿あめのようなよくあるお菓子の屋台もあるが、サバゲ―サークルがエアガンを使った射的の屋台を出していて射的ってあの、火縄銃みたいな木の銃を使うイメージだったんだけど、現代式射的になってるのすごいわ。扱いかたとかはサークルの人が教えてくれるんだろうなぁ。知らんけど。一旦何か食べるかと思って大学版生徒会の学友会の出店に足を進めた。

「お、空じゃん。焼きそば食いに来た?」

「そりゃ焼きそば出してるから食いに来いよ~って言われたら行くっきゃないだろ。それに13時からの声優さんのトークショーまで時間あるしさ。ちなみに注文は焼きそばと焼き鳥の塩1つずつで」

 友達はりょーかいと言ってオーダーを作る係の人に持っていく。

 今話した通りこの大学では1日目は有名なアニメの声優さんが来るらしい。俺アニメはわかっても声優さんは全く分からないって人なんだけど、さすがに代表作のアニメは有名すぎて知ってた。実行委員はどこからそのお金が出てくるんだろう。ちょっと気になる。

 いつもの大学の風景と違うことに少し感慨を覚えていると、お疲れと声がかけられる。後ろを振り向くと、肩ぐらいまでの長さの髪の毛のおとなしそうな女性が浅田と同じ実行委員の上着を羽織ってそこにいた。

南雲なぐもさん実行委員お疲れ様。今何やってるの?」

 俺がそう聞くと、

「本来は13時から始まるトークショーの見回りをするんだけど、今は特に何もないから暇人だね」

 おっとりとした彼女の周りにはいつもゆったりとした空気が漂っていて、それに加えて、和風美人というワードがぴったりな人なので、同級生、先輩共に人気がある。

「なるほど、浅田が入口で棒立ちで暇そうに入場者カウントしてるから頑張れって言ってくれば?」

 俺がそう言うと南雲さんはえ、そうなの?

 じゃ行ってこよーと言って嬉しそうに走っていく。

 何を隠そう、南雲さんと浅田はお似合いのカップルである。どれくらいかというと、他人に見せつけることはないものの、お互いの間に入り込もうとすることができないほどの関係性が二人の会話を聞いてるとわかる。俺も彼女ほしいけど、こんな感じで信頼できる人がいいなぁとか思うこともしばしばある。あと、浅田は自分の彼女がほかの男にとられないか心配な時が多いらしい。あれだけ首ったけならそんなことはないだろうが、美人な彼女がいるからこその悩みだろう。幸せに爆ぜてくれよろしくたのむ。

 そのあとは出店を回ったり、シフトがオフの友達と会ったから雑談しながら屋台を回ったり、昼ご飯を食べたりしていた。


 ついに待ちに待ったトークショーが始まる。しかし質問コーナーは無いらしい。個人的に声優さんって普段の声と演じてる時の声って違うから、使い分けてるのかなって思って質問しようとしてたから残念だ。


 そしてトークショーも終わりに近づき俺は結構満足していたときに、ステージ向かって左側から男が乱入してきた。急いで警備員が集まり集団で抑えるが、男は警備員達を腕で薙ぎ払う。それにも負けず抑える警備員にそれぞれに金的やみぞおちを殴るなど急所を攻撃して戦闘不能にしていく。その光景を見て最初は状況を理解していなかった観客も叫び声をあげ始める。

「なにが……起きてるんだ?」

 俺は体が動かなかった。前から逃げてくる人が体にぶつかってくる。足に力が入らない。尻もちを着いたまま俺は状況を傍観する。ステージでは声優さんがナイフで滅多刺しに刺されていて、刺してる本人は返り血で真っ赤に染っている。そして顔にはにんまりとした笑みを浮かべて死ねぇぇぇ!と叫んでいる……。

 そして高笑いをしながらステージから降りて逃げ惑う群衆にナイフを使って危害を加えていく。さっきまで人が沢山集まっていた場所に血の霧が舞い散る。嫌だぁ! という叫び声が聞こえる。子供の泣く声が聞こえる。犯人の笑い声が聞こえる。そのなかでも逃げてくださいと浅田が移動を促している。

 そしてその犯人の意識は浅田に向かい、彼に向かって犯人が走り出す。

 アイツが向かって来てるのことに気づいて無い。。そう思った。だから――。

 いつの間にか走り出してやめろと叫んでいた。

「浅田! 逃げrッ……」

 刹那、衝撃が腹部を襲う。そして気がついたら空中にいた。訳が分からなかった。だってこの男はさっきまで少し離れたところに居ただろ。なんで俺に攻撃できるんだよ? 目の前には血まみれでニコニコと笑っている男が俺に逆手に持ったナイフを顔面に刺そうとしている状態がスローモーションのようになっている。意識も朦朧としてきたかもしれない。

 あぁ、死ぬのか。俺。でも、

「死にたくないわ」

 そう言い放ったと同時に振り下ろされるナイフは、俺の体には当たらなかった。正確に言うと犯人の右腕は本来曲がらない方向に肘が曲がり、男は吹き飛ばされた。

 そして反動で俺も姿勢が変わり顔面からアスファルトに落ちる。普通に痛いし視界が白黒する。

「よく頑張ったね~。偉いよ」

 という声共に後頭部が撫でられる。俺は仰向けになったがに焦点が合わないせいで顔がぼやけて見える。

「……誰だ」

 俺はかすれた声で謎の人に問いかける。

「あの人間もどきの処理班だよ、あとその状態で動いちゃだめだよ。ていうか君素質あるね。裏の世界見てみない?」

 俺にはそう聞こえた気がした。それを最後に暗い場所へ意識が落ちていった。


「ふーん。空くんカッコよく成長したじゃん。私死んだと思ってたんだよ」

 私は横で気絶している男の子の頭を撫で終えて前を見る。

「あの男もう少しで戦闘不能になりそうだね。久しぶりにしては上出来じゃん。でもこんなにボロボロになるなんてちょっと許せないなぁ~。相応の罰は受けてもらおうかな」

 そう言って軽くストレッチをした後私は能力を発動して相手の次の思考を読み始め戦闘の続きを引き受けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る