カレン ~episode 13~
玄関の扉を開け、二人の駆けてくる足音を聞き、目の前でその足音の持ち主が急停止したのを私の目が捉えたころには、もしかしてこれは現実かもしれない、と思い始めていた。夢にしては何もかもがリアルすぎるし、こんなに長い間目が覚めないのもおかしい。それでも私はまだ、雲の中にいるみたいにふわふわした気分だった。
「「どうだった!?」」
「ねえ」
声を揃えて言う二人に向かって私は尋ねる。この二人は私が世界で一番信用している二人だ。
「これって現実なの?」
二人が驚いたように顔を見合わせた。まるで二人の間に鏡があるかのような完璧なタイミングで二人同時に私を見つめ直し、大きく頷いた。
「「そうだよ」」
沈黙が流れる。二人が私の次の発言を待って、唾を飲み込んだ。
「きゃー!やった!」
突然叫び出した私に度肝を抜かれて、二人が後ろに三歩後退りした。でも私はそんなことにはかまっていられないほど興奮していた。だって、ねえ、こんな素晴らしいことが起こるなんて、誰が予想した?
靴を脱ぎ捨て玄関に上がり込むと、私は二人の手をそれぞれ握ってスキップでリビングまで引きずって行った。二人はあっけにとられたように私を見つめたまま、私に指示されるがままソファーに座った。その二人の前に仁王立ちした私は、腰に手をあてて言った。
「なんと、今日、栗原花蓮は…。」
二人がちらりと目を合わせる。
「橘くんに告白されました!」
「うっそ!」「やったじゃん!」
二人同時にソファーから立ち上がり、私に抱き着いた。
「何が何だか分からないけど、付き合うことになったの!」
私はわけも分からず叫んだ。
「一旦皆、落ち着いて。」
一番興奮している真綾が私たち二人に向かって言った。
「花蓮、最初から何も漏らさず、正確に話してくれる?」
「一言一句逃さないでね。」
玲奈も圧をかけるように言う。私は笑いながら頷いた。
「ええっと、どこから話すべき?」
「迷うんだったら、花蓮が昼、電車に乗ったところから―」
「それ全部話してたら、一晩かかっちゃうよ。」
私はふき出した。
「まず合流して、真面目に練習して、それから休憩時間を設けたんだけど―」
私は二人の言った通り、一言も漏らさず正確に話した。付き合うときの台詞も、その後話したことも、ひとつ残らず全部話した。言いたくってたまらなかったのだ。この幸せを、誰かと共有したかった。自分は世界で一番幸せであるという自信が、今の私にはあった。
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