ロケット花火が結ぶ恋のお話

たんぜべ なた。

花火舞う

 ここは、JAXA種子島宇宙センターのロケット発射場が一望できる景勝地、竹崎展望台。

 ロケット発射台にはH3が設置され、今まさに飛び立とうと白煙を履きながら、その瞬間に備えている。


 私の隣には幼馴染が拳を握りしめ、H3をジッと見つめる。

 そして、私たちの周囲には在京キー局を始め、地元のテレビ局に至るまで、数多のテレビ取材班が大挙している。


『発射20秒前…19…18…』

 いよいよ打ち上げへ向けて、最後のカウントダウンが入り、響く音声に周りの高揚感も高まってくる。

 武者震いを始める幼馴染。


『8…7…6…エンジン点火!…5…4…』

 ロケットの足元から激しい煙が上がりだし…

『3…2…1…リフトオフ!』

 掛け声に合わせ、ロケットは地上から解き放たれる。


「行っけぇ~~~!!」

 両手を上げ、叫ぶ幼馴染。


 轟音を残し、ゆっくりと上空へ飛翔を始めるロケット。

 大歓声に答えるように、徐々に速度を増しながら、南西方向へ放物線を描き始めた頃…その時が訪れる。


 何の前触れもなく、発射時よりも更に激しい大轟音を残し爆散するロケット。

 大歓声は一気に途絶え、沈黙が展望台を覆ってしまう。


「綺麗な花火……」


 素直そっちょくな私のツブヤキを横に聞きながら、激しく右往左往している幼馴染。

 折角乙女チックに感想イヤミを言ってあげたのに、この娘は反撃イヤミの一つもカエシてこない!


 私は少々不貞腐れ気味の顔になり、幼馴染は謎の祈祷まで始めてます。


 打ち上げが成功したには、取材を受ける予定となっていた幼馴染も、お察し状態になってしまい、周りのテレビスタッフも残念そうに機材を撤収しています。

 取材車は一台、また一台と去っていき、やがて私たちだけが竹崎展望台に取り残されました。


「さて、打ち上げも終わった事だし、帰りましょう。」

 怪しい祈祷を済ませた幼馴染の肩に手をかけると、彼女は顔を上げてニッコリ笑うと


「キレイナハナビ……」

 そう答えるのでした。


 以降、彼女は宇宙開発から足を洗うと、私をストーキングする困ったちゃんになってしまうのです。

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ロケット花火が結ぶ恋のお話 たんぜべ なた。 @nabedon2022

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