美由紀の想いとハーレム

 エリを中央に、右にマキ、左にミキが座っている食台。

 その向かい側演台に立つのはミユキ


「私は思うのです。

 惚れた人が同じというだけで、友好的な同性がギスギスしてよいのでしょうか?

 友好的な同性パートナー同士、惚れた人を共有してはダメなのでしょうか?

 そもそも、夫婦は男女一組でなければならないのでしょうか?」

 ミユキは聴衆に穏やかに語りかければ、マキとミキが頬を赤らめてしまう。

 そんな娘たちを眺め、微笑むエリ。


「私は思うのです。

 結婚のあり方について、改めて考えるべきではないか…と。

 ただ、闇雲に何もかも認めるのではなく、お互いの関係を深め、お互いを認め尊敬し合える…結婚本来の姿を取り戻したい!

 結果、それがハーレムという事態を招くとしても…。」

 エリが若干怪訝そうな顔に


「ハーレムによる、多夫多妻を認めません!」

 ミユキの発言に、エリも笑顔になる。


「ところで先輩?

 何でハーレムの話になってるんですか?」

 赤面のマキがミユキに質問する。


 一つ咳払いをしてミユキは話し出す。

「私が人間不信だからよ!」

「「「へっ?」」」

 呆気にとられる聴衆達に、恐縮するミユキ。


「以前話した通り、私が出会った人々の多くは、私を通した父の姿を見ています。

 ですから、私を見て話す方は誰も居ませんでした。

 おまけに物心ついた頃には、両親は家に居ることはほとんど無く、一緒に食事を出来たのは数えるぐらいでした。」

 ミユキが目を伏せる。


「人々の下心が見え隠れする会話に付き合わされ…親に相談することも出来ず。

 侍女や執事へ相談するわけにもいかず、私は悶々としてしまい…人間不信になってしまいました。」

 聴衆もミユキの方に身を乗り出し、不安そうに彼女の顔を覗き込む。


「そんな中、ミツオ君に助けられました。

 彼が身体を挺して守ってくれたのは

『後藤田 悟の娘』ではなく、『後藤田 美由紀』というです。」

 ミユキの顔が綻び始め、聴衆の目線も優しくなる。


「私をとして認め、話しかけてくれるあなた達も同じ…マキちゃんもミキちゃんも…ね。」

 ミユキのウィンクにドキッとするマキとミキ。


「だから、私を『美由紀』として見てくれる人たちと一緒に暮らしたいのっ!

 その為には、ミツオ一人だとダメなの…。」

「「…」」

 モジモジするミユキに、こちらもモジモジしてしまうマキとミキ。

 一人エリだけがニコニコしている。


「それで、ミユキちゃんはこれからどうするの?」

「と、言われますと…」

 エリに問われ、ミユキが戸惑う。


「民法改正の施行は三年後、移行期間が始まるのは…もう少し先かしら?

 それまでは、ハーレムはダメなはずよね?

 そもそも、ハーレム形成については、成人していたとしても、複雑な要件形成が求められているはずよね?

 現状では、あなた達は未成年…自分達だけでは結婚の意志を表明しても社会的には認められないわよ?

 どうするのかしら?」

 マキとミキの目が点になる…エリさんって勉強熱心。

 ミユキちゃん、思案中。


「あるいは、とするのかしら?」

 エリの一言に、母親エリを挟んで顔を見合わせるマキとミキ…そして、小さく頷くミユキ。

 エリはため息をつく。

ミユキちゃんあなた、まずはご両親とちゃんと相談しなさい。

 難しそうなら、私が相談に乗ってあげるわ。」

 そしてゆっくりと席を立ち、ミユキのそばに来ると、そっと彼女ミユキの頭を抱き寄せる。

ミユキちゃんあなたは、良い娘よ。

 だから、私の言葉の意味は解るわね?」

「…はい。」

 目をつむり、エリに身を任せるミユキ。

 エリはミユキの頭を優しく撫でながら、マキとミキに視線を向ける。

 二人マキとミキは頷くと、そっと席を立つと静かに二階へ戻って行った。


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【次回予告】

 フフフ、みなさんお元気でした?

 キョウコよ!

 あらあら、鴨がネギを背負しょってやって来るのかしら?

 まだまだ幼いのに、頼もしいお嬢さんね。


 さて、次回は『満面笑みの杏子さん』

 ささ、貴女の望むモノは何かしら?

 おねぇ~さんにも教えて頂戴ね。

 フフフ、心配はご無用よっ!

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