勉強不足のカラス達

 さて、週末がやって来た。

 宿題の返答に一週間焦らされ続けたマキとミキが、腕組みをして生徒会室に陣取っている。

 その向かいには、生徒会長席に佇むミユキ…口元に愛用の扇子をかまえ、満面の笑みである。


 さてさて、ミツオ君はと言いますとね。

「よぉ~、ミツオっていうのは、お前かい?」

「オレたちに付き合ってもらおうかぁ?」

 ミユキの恋人宣言以降、連日私設応援団ゴクミ男子生徒達だんいんに連行されていた…。


「んで…今日もなのねぇ~。」

 ミツオ君、ガックリ肩を落とすと私設応援団ゴクミ男子生徒達だんいんに本日も拉致されていくのでした。


 閑話休題それは、さておき


「ごめんなさいね、委員会の仕事が立て込んでしまって…。」

 ミユキが謝罪すれば

「いいえ、公務お疲れ様です。」

 ミキが応え、マキが頷く。


「あらあら、今日は言葉遣いが違っているようね。」

「ええ、私も公使館職員の娘ですから。」

 オホホと笑い合うミユキとミキ。


「はぁ~…面倒くさい。」

 深くため息をつくマキだった。


「それで、宿題の回答は出ましたか?」

「「そ…それは…。」」

 ミユキの問いかけに口籠るマキとミキ。

 暫しの沈黙の後、ミユキがゆっくりと立ち上がる。


「さて、私の与えた宿題を何処まで紐解けましたか?」

「それでは…。」

 ミユキの問いに答え始めるミキ…マキはニコニコしながら…返答を放棄した。


「今回の予算委員会で話されていたのは、法改正…。

 しかも、六法の改正という大きな話であり、文面に至っては明治依頼の大変革…。」

 ミキの発表に、少し前のめりになるミユキ。


「…なんですけど…。

 話がよく解りませんでした!」

 テヘペロするミキに、肩透かしを受けるミユキ。


「嫡出子、非嫡出子の項目削除だったり…

 相続云々の改正だったり…

 判例法の見直しだったり…。

 ああ、天皇家が永続できるとか?

 宮家が増えるやら、男系男子の天皇が今後も安定して世襲される…とか?」

「最後の疑問形は置いておくとして…。

 貴女達、報道テレビに振り回されちゃったのね。」

 ミキの続けた言葉に、深くため息をつくミユキ。


「『紐解いた』と聞かれたのであれば、こちらからの質問も出来ますか?」

 おもむろにノートを机上へ取り出すマキ。

「ええ、いいわよ♪」

 そう言って席に座り、ニヤリと微笑むミユキ。


「先程の先輩の言葉から考えるに…。」

 マキとミキの二人がノートを眺めながら相談している。

 二言三言、言葉を交わしつつ…焦点を絞り込んでいくマキとミキ。


「「って、どういうことなんですか?」」

「ふぅ~。」

 マキとミキが真剣に質問すると、何故か安堵の声が漏れてしまうミユキ。


「貴女達はに対して、どのような認識なのかしら?」

 ミユキの質問に、マキとミキが顔を見合わせた後、おずおずしながら返答する。

「「って、結婚詐欺のことですか?」」

「ああ…そっちの方の認識なのね。」

 マキとミキの返答に相槌を打つミユキ。


「そうね、婚姻している事実を隠し、配偶者以外の人と姻戚関係を結ぶ事を重婚と言うわね。

 そのような行為を行ったヒトに対してと言う訳よ。」

「「ふむ。」」

 ミユキの説明にマキとミキが頷く。


「じゃぁ、っていうのは、結婚詐欺が無くなるって事?」

 マキが不安そうな顔になる。

「いいえ、結婚詐欺は無くならないわ。」

 ミユキの声が声高に鳴り、目付きが厳しくなる。

 その姿にビビるマキとミキ。


「結婚詐欺は許さない!

 けど、は撤廃したい!」

「ミユキ先輩の言いたいことが解りません!」

 ミユキの力説にマキが反論する。


「そうね…確かに訳がわからないわね…。」

 一つ咳払いをし、マキとミキの顔を眺め、扇子を一つ叩くミユキ。

を合法化するのよ!」

 扇子を窓の方に掲げ、沈む夕日を指し示すミユキ。

「はぁ~~?」

 さらに意味不明な発言に困惑を隠さないマキとミキだった。


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【次回予告】

 ミユキです。

 ウフフ、来ますわよ!

 私の望んだ、新しい時代が!


 次回『愛は法を捻じ曲げる?』

 押してダメなら押し倒せ!

 引いてダメなら引き倒せ!

 さぁさぁ、美しく尊い時代ミレニアムの幕開けよぉ~!

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