今泣いてたカラスがもう笑ってる

「じゃぁ、私は此処で。」

 マキとミキの自宅近くでミユキがお辞儀をするとスタスタと裏に姿を消した。

 ミツオ君からカバンを受け取り、颯爽とミユキは立ち去る姿に、呆けてしまう三人さん。


「「それじゃ、私達も。

 ありがとね~ミッ君♪」」

 いつの間にか、悲壮感も何処へやら、笑顔で手を振り帰宅したマキとミキだった。

 彼女たちの帰宅を見届け、安堵したミツオも帰路についた。


 ◇ ◇ ◇


「ねぇ~ミキ。

 この動画って何をやっているの?」

「それはね…。」

 只今、マキとミキは共同戦線を張るべく、熱心に勉強中っ!

 喧々諤々よろしく、論争をしている二人の声が聞こえてくるが…笑い声が弾け、痴話喧嘩とも程遠い状況。


「あらあら…」

 そんな二階の騒動に聞き耳を立てながら、食後の食器洗いをしているエリ。


 程なくすると玄関から声が聞こえてくる。

「こんばんはぁ~、回覧でぇ~す。」

 いつもの調子でミユキがやって来る。

「いらっしゃ~い。」

 エリが玄関に出るとミユキが入ってくる。


「今日は、和気あいあい…ですね。」

 満面笑みのミユキ

「そうなのよ。

 さ、上がって、上がって。」

 エリに促されミユキも家に上がっていく。


 食台に向かい合って座るエリとミユキ。

「うふふ…今泣いてたカラスがもう笑っている…でしょ?」

 エリがうけ合えば

「そうみたいですね。」

 ミユキもクスクス笑っている。


「ええ、奪われた恋人ヒトを取り戻そうと、必死なようねっ!」

「あら、それは大変。」

「でしょ?

 二人共、ミツオ君が好きなのにね。」

「大丈夫なのかしら?

 いずれ、ミツオ君の取り合いになるでしょうに…。」

 不安さを取り繕ってみせるミユキに

「まぁ、その時は、その時よっ!

 …それに、面白そうなもあるようね。」

 エリが満面の笑みで頬杖をつき、ミユキを見つめる。


「貴女の恋路コイも動き出したようだし…。」

「ええ…まぁ…。」

 エリの言葉に赤面してしまうミユキ。


「面白いことになりそうね。」

 エリが目を細める。


「エリさんは…勉強熱心なんですね。」

 しばらくしてミユキが応える


「あら、法改正この話は、娘たちから聞いた話よ。

 何でも、素敵な先輩にご教示頂いたみたいね。」

「!!!」

 エリの返答に思わず驚いてしまうミユキ。


「まぁ、貴女も頑張ってね。」

 エリはゆっくり立ち上がると、お茶を注ぎに台所へ向かった。

(エリさん…何処まで知ってるのかしら?

 あの物言いだと、既に気付いているかも…。)

 ソワソワするミユキ。


 さて、お茶を注ぎ終わり、カップを持って戻って来るエリさん。

「ところで、貴女のお相手は、どなたかしら?」

「私の想い人は…。」


 とミユキが話しかけたところで、不意に二階の部屋の扉を開ける音…。

「そ…それでは、私はこれで!」

 カップのお茶もそのままに、慌てて玄関に移動するミユキ。

「お疲れさまぁ~。」

 エリの声を背にミユキは戸外に出た。


 変わって、階段を降りてきたマキが台所に顔を出す。

「おかぁ~さん…って、あれ、お客様だったの?」

 食台のカップを眺めてマキが問えば

「ええ…まぁ…ね。」

 気の無い返事を返すエリ。

「ふぅ~ん…。

 って、私達にもお茶をちょうだい!」

 そう告げると、マキは部屋に戻って行った。


「さてさて…お茶と…お茶受けも必要かしらね?」

 席を立ち、娘達の飲み物を準備するエリさんだった。



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【次回予告】

 はぁぁぁ~~いぃ!

 みぃ~んなぁのぉ~ヒィ~ロォイィ~ン!

 ……コホン、エリです。


 さてさて、かしましい娘達…お年頃なのね♪

 私にもそんな時期が…いいえ、今でも私の青春は続いているわ!


 さてさて、次回は『勉強不足のカラス達』


 あらあら、あれだけお勉強してたのに…マキもミキもまだまだね。

 それとも、ミユキちゃんの方が一枚上手なのかしら?

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