第三の乙女

ヴァレンタイン ~青天の霹靂~

 週が開けての月曜日。

 マキとミキが席取りで一騒動起こす、いつもの授業風景。

 昼食時はいつも通りの「あ~~んっ!」合戦を展開する三人。


 そして、昼食を済ませ教室に戻ってきた三人。

 しかし、今日はいつもと違う。


 ミツオの席の前、左にマキ、右にミキが立っている。

 突然涙を流し始めるマキとミキ。


「ど、どうしたの二人共。」

 慌てて席を立つミツオ。


 涙で赤らんだ眼差しをミツオに向けるマキとミキ。

(ミツオ君は好きだけど、ミキの事も大切だから…)

(ミッ君は好きだけど、マキには幸せになって欲しいから…)

 思いの丈が溢れるように、マキとミキはミツオに語りかける。


「ミツオ君…」

「ミッ君…」

「「私と別れて下さい!」」

 頭を下げるマキとミキ。


 一瞬教室が静寂に包まれる…が


「何しやがったんだ、あのバカ!」

「へ、フラれてやんの、ザマァねえな…」

「はぁ~、バチが当たったんだよ。」

 黒いイヤミが漏れ


「あんな良い子たちなのに、酷い!」

「ねぇ、何があったの?」

「たぶんだけど…」

 黄色い憶測も飛び交う


 やがて涙が床に落ち始めると顔を両手で覆うマキとミキ。

 もはや感情のコントロールが出来ず、言葉が出てくる気配もない。


 ミツオはガタリと席に腰を落としてしまう。

 ショックのあまり放心状態でまばたきもしない。


 別れ話の三人を中心に、生徒がいやが取り巻くコロシアム。

 何やら不穏な空気が漂い始めている。


 さて、そんな教室の中へ誰にも気づかれず入ってきた、上級生の女子生徒。

 緑なす黒髪をなびかせ、口元には愛用の扇子をあてて、ミツオの正面、マキとミキの間に割って入る。


「えっ?」

「ちょ…ちょっと…あれ…って…」

「生徒…会長…よね?」

「何しに来たのかしら?」

 生徒会長の存在に気づいた女子生徒たちの間にどよめきが起こる。


 生徒会長は愛用の扇子を口元から離すと、そのままミツオのおでこを叩く。

 ゆっくりと顔を生徒会長の方に向けるミツオ。

 ミツオが見上げた先に居るのは生徒会長"後藤田ごとうだ 美由紀みゆき"!


「後藤田…先輩…?」

 微かに問いかけるミツオ。


 不敵な笑みを浮かべ、後藤田先輩は高らかに宣言する。

「ミツオ、今から私があなたの恋人よ!」


 教室が一気に凍りつく。

 声の主ミユキの顔を見上げ、言葉の意味を理解した途端に凍りつくマキとミキ

 ミツオまで凍りついている。


 やがて、昼休みを告げる予鈴が鳴り響く


「それでは、私はこれで。

 ミツオ、放課後は生徒会室に来なさいね。」


 何事もなかったかのように教室を出ていく生徒会長ミユキ


 …しばらくして


「あ~~、お前らぁ~~、授業…を…始…め……る……ぞ?」

 教室に入った教師の目に映ったのは、石像のように固まった生徒たちの姿だった。


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【次回予告】

 エリです。

 あらあら、何だか不思議な事になってきたわね。

 おまけに三つ巴の取り合いになるのかしら?

 ミツオ君も大変ねぇ。


 さて、次回は『突撃!生徒会長』

 フフフ、ミユキちゃん…どんな恋路を展開するのかしら?

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