ヴァレンタイン ~引き下がる二人~

 ~マキside~

 バレンタインに染まる町並みを歩きながら、ふと隣のミキに視線を送るマキ。

この娘ミキは、ミツオ君に逢いたくて、海外から帰って来たんだよね。)

 街の景色を眺めながら、笑顔のミキ。

(ミツオ君に認めてもらおうと思って、必死になってテニスも勉強も頑張って…。)


 ふと、マキと視線を合わすと、にこやかに微笑みかけるミキ。

(真面目で真っ直ぐで…負けん気の強い、優しい娘…。)


 特に言葉をかわす訳では無いが、ミキはまた街の風景へ視線を戻す。

(そして、ミツオ君の初恋の娘…。

 彼女が居たから、ミツオ君の心に忍び込めた。)


 マキは視線を正面に戻す。

(私がミツオ君に引かれたのは…助けられたから。

 きっと、今までのことは気の迷い…。)


 マキの頬に薄っすらと流れる一筋。

(ミキならきっと、ミツオ君を幸せにしてくれる…。)


 ~ミキside~

 バレンタインが近づき、ソワソワしている教室の中、ふと窓の外を眺めるマキに視線を向けてしまうミキ。

(マキって美人だよねぇ…。

 それに、ミッ君ともうまく行ってるようだし。)


 不意にマキと視線が合うミキ、にこやかな笑顔を向けるマキ。

この娘マキなら、ミッ君を任せられる…。

 私は浮気をしてしまったから…ミッ君には相応しくない。)


「どうしたの?」

「ううん、何でもない。」

「…そう。」

 そう応えると、再び外を眺めるマキ、ミキはまだマキを眺めている。

(それに、マキは早いとこ結婚して、ミッ君のところにお母さんと一緒に住むべきよ。

 幸い、エリママもキョウコさんに気に入られているし…。)


 ミキの頬に薄っすらと流れる一筋。

(マキならきっと、ミッ君を幸せにしてくれる…。)


 いよいよ二月十四日ヴァレンタインがやって来る。

 ここは、マキとミキの相部屋、座卓を中心に向かい合って座る二人。


「ねぇ、ミキ…」

「ねぇ、マキ…」

 二人は感情が高ぶり涙腺が緩み始める。


「「どうして、私たち同じ人を好きになっちゃたんだろう…」」

 マキとミキは泣き出してしまった。


 ◇ ◇ ◇


「こんばんは、回覧です」

 隣のお嬢さんがやって来た。

「あら、ありがとう。」

 エリが回覧板を受け取ると、二階から娘たちの泣き事が聞こえてくる


「ごめんなさいね、賑やかで」

「いいえ、お構いなく

 …ところで、何を泣かれているのですか?」

「そうそう、それがね…って、立ち話もなんだから、上がっていきなさい。」

「お邪魔します」

 エリに促されるまま、家に上がり込む、隣のお嬢さん。


「何か有ったのですか?」

 怪訝そうな、隣のお嬢さんに

「さぁ~、何かしらね?

 ってやつかしら。」

 とぼけるエリだった。


「でも、大泣きしてますよ、二人共。

 …喧嘩とかしてません?」

 心配になる、隣のお嬢さん…なのだが

「大丈夫よ!」

 意味不明の太鼓判を押すエリ。


「ところで、貴女の恋路はどうなの?

 ねぇ、お嬢さん?」

「そ…それは…。」

 エリの逆質問に戸惑ってしまう、隣のお嬢さん。


「まぁ、貴女のタイミングもあるかも知れないけれど、

 チャンスを逃したら、よ♪」

 エリがウィンクすると、隣のお嬢さんも応える。

「頑張ってみます…。

 望みがないわけではないので…。」


「頑張ってチャンスを掴むのよ、応援してるわ!」

 サムアップするエリに、大きく縦に首を振る、隣のお嬢さん。

「後藤田 美由紀、全力で行きます!」


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【次回予告】

 ミユキです。

 エリさんの応援に応えて、私も恋に邁進します!

 ウフフ、嵐が巻き起こるわよ!


 さて、次回は『ヴァレンタイン ~青天の霹靂~』

 あらあら、マキもミキも何を考えているのかしら?

 いよいよ、私の出番かしら?

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