新年会
ここはミツオ宅の玄関先、正月松の内にて、今まさに三人の親子が到着した所。
「こんにちは~。」
タカシさんの声が玄関に響けば
「いらっしゃいませぇ~。」
返答するのは、何故かエリさん。
聞き慣れない声に戸惑うタカシさんをよそに…。
「こんにちはぁ~、エリママぁ~。」
ミキが笑顔でエリに抱きつく。
「あらあら、この娘は…。」
娘の頭を撫でながら、ナナコはエリに挨拶をする。
「初めまして、ミキの母、ナナコです。
隣りにいるのが、主人のタカシです。」
ミキを立たせると玄関で正座になり頭を下げるエリ。
「娘さんをお預かりしている、江藤 恵利です。」
「おかぁ~さぁ~ん!
どうしたのぉ?」
奥からマキもやって来る…そんなマキを捕まえて自慢気に紹介するミキ
「お父さん、お母さん!
紹介するね、私のマキお姉ちゃん!」
いきなり紹介されて困惑気味のマキであった。
…ところで、ここの家主は何処行った?
さて、二家族が挨拶を済ませた頃、いよいよ家主が帰宅してくる。
「あら、ナナちゃんお久しぶりぃ。
タカシさんもお元気そうで何より!」
景気のいい声とともにキョウコが帰ってくれば
「タカシさん、久しぶりだねぇ。
今日はゆっくりして行ってくれ。」
マモルも帰宅する。
「はいはい、みんな中に入ってぇ~!」
山のような荷物を抱え、玄関の渋滞を緩和させようとするミツオ君。
そして、三々五々に奥へ上がっていくお客人と家主達。
「っとに、息子使いの酷い親だ!」
ブツクサ文句を言いながら玄関を閉めるミツオ君だった。
◇ ◇ ◇
「それでは、改めまして…。
新年、あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いします!」
マモルが発生したところで、全員が視線を向ける。
「乾杯!」
「「「かんぱ~い!」」」
マモルの音頭に合わせ、居合わせた者同士がお互いにコップを合わせて応える。
そして準備されたおせち料理にお雑煮と…舌鼓を打ち始める方々。
マキとミキはお互いの母とともにキョウコのところに集まっている。
ミツオはマモルとタカシに絡み、釣り談義に興じている。
「さてさて…うちの子は、どちらに関心があるのかなぁ?」
キョウコが赤ら顔でマキとミキを見やると、二人は苦笑いしてしまう。
「まぁまぁ、キョウコちゃん。
新年早々する話じゃないでしょ?」
ナナコがキョウコに酌をしながら、キョウコを宥めれば
「キョウコさんはどちらがお好みですか?」
エリはキョウコに困った質問を返すのだが…。
「ん~~、両方来て貰ってもいいかなぁ。」
キョウコさんの発言に、顔が真っ赤になるマキとミキ…そのままミツオに視線を向ければ…。
男共三人は今だに釣り談義に没頭中…だった。
深くため息を付いてキョウコは続ける。
「ゴメンネェ…。
あんな朴念仁で…。」
「「い…いいえ!」」
慌てて手を振ってしまうマキとミキ。
その所作にコロコロ笑ってしまうエリとナナコ。
改めて座り直すエリとナナコ。
「
「ええ、喜んでお引き受けしますね。」
何故かマキとミキも母親の隣で一緒になって頭を下げている。
「何だか、藤本家と江藤家のお見合いみたいだな…。」
そう言ってカラカラ笑い出すキョウコさんなのだった。
「…っとに、この一大事に、うちのアホオヤジと愚息は何をしてるんだか…。」
キョウコが男共三人を睨みつける!
殺気を感じた男三人は、ヘラヘラ笑いながらキョウコの方に顔を向ける…。
「あんたらも、ちゃんと挨拶を済ませな!」
キョウコと男共の所作に吹き出してしまう女性陣。
((あ~ぁ、こんな日々が続くといいのになぁ…))
ふとマキとミキが同じことを考えてしまう。
娘の顔を眺め、お互いの顔を見て微笑むエリとナナコ。
「くれぐれも、娘のこと、よろしくお願いしますね。」
「ええ…お任せ下さい。」
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【次回予告】
ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
いつも、妻と息子がご迷惑をおかけして申し訳ありません。
さて、次回は『ヴァレンタイン ~引き下がる二人~』
おやおや、穏やかな話じゃなさそうですね。
ところで二人ってどなた?
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