文化祭の華

 ~生徒会長のお言葉~

「今年の文化祭では、美人コンテストを開催します!」

 後藤田生徒会長の宣言に色めき立つ体育館内の生徒紳士と淑女たち。

 一部若手の教師たちも関心を示しているようです。


「つきましては、各クラスの演し物に即した姿で参加をお願いします。」

 生徒会長の言葉を聞いて、三々五々に話し始める生徒たち。


「なお、美人コンテストの詳細については、後日掲示しますので、を確認し、奮って参加下さい。」

 …思えば、これが今回のドタバタ劇の幕開けとなったのである。


 ~文化祭 ミツオside~


「…何で、こうなった?」

 ヴィクトリア風メイド服に身を包み、しっかりとメイクまで施されて…冷や汗をかいているミツオくん。

 そして、彼の向かい側には、メイク担当のマキとミキ。


「「かわいいわよ、ミ・ツ・オ・く・ん。」」

 ミツオの両頬を人差し指でつついてくるマキとミキ。

 彼女たちも同じようにヴィクトリア風メイド服に身を包み、しっかりとメイクも決まっている。

 清楚さを漂わせるマキと、可愛らしさを全面に押し出すミキ、両人揃って、とっても嬉しそうな顔である。


 周りを見れば、男子生徒もみなさん揃って同じ状態…。

 それぞれ担当の女子生徒にメイクを施され、何とも渋い顔になってしまう男子生徒たち。


 そう、我がクラスの演し物は『迷度喫茶メイドきっさ』…そして、店員はという徹底ぶり…である。

 さてさて、この事態を迎えている元凶と言えば、生徒会長の『美人コンテスト』発言である。

 それも、『美人コンテスト・青年の部』なる枠の存在…である。

 困った事に、各枠には報酬がぶら下がっており、これが文化祭の評点にも絡んでいるのだ…。


『文化祭の評点』という何とも意味不明な文言が踊っているのだが…要は、評点次第で演し物の補助ほうしょうきんが支給されるというシステムだ。

 演し物の手出しを減らしたい生徒諸君は奮って参加する。


「性別に依る格差は是正しなければなりません!」

 という、生徒会長の並々ならぬ肝入り発言もあり、男女の性別を問わず、全校生徒が問答無用で『美人コンテスト』に参加する羽目になってしまったのである。


「…後藤田会長、何を考えてるんだろう?」

 凛々しい貴婦人風に仕上がり、当惑気味のミツオくん。


「面白そうじゃない!」

 ミツオのメイクがバッチリ決まり、すっかり上機嫌のミキ。


「そうね、私らと各賞を総ナメしましょ!」

 化粧道具を片付けながら、こちらも満更でもないマキ。


「「さぁ、私たちの『迷度喫茶メイドきっさ』開幕よ!」」

「「「オーッ!」」」

 マキとミキが気合を入れれば、女子生徒たちも二人に応え、高々と歓声を上げる!

 …ミツオを始め男子生徒たちは、俯向きながら、元気無くコブシを上げる。


 ~文化祭 ミユキside~


「よろしかったのですか、生徒会長。」

「何か問題でも?」

「前代未聞の事態ですよ!」

「そう?

 私が生徒会長として公約したことを誠実に行っているだけよ。」

「ですが…予算の乱用は…。」

「大丈夫よ、費用は全て私のポケットマネーから出します!」

「ええっとぉ、そういう問題ではないのですが…。」

 副会長の言葉をサラリと聞き流すミユキ。


(フフフ、面白くなってきました。

 さて、今日を境にどんな『恋愛』が誕生するかしら?

 ワクワクしますわ。)

 怪しげな笑顔を浮かべるミユキと、彼女の笑顔にドン引きしている副会長。


 ~文化祭 マキ&ミキside~


「「いらっしゃいませぇ~!」」

 来客のたびに、明るい声で迎えるマキとミキ。

 この二人ペアの接客は、ちょっとした人気を博している。


 清楚と可愛らしさという対象的な雰囲気の美少女二人による接客、しかも、二人はあのテニス大会で、に一矢報いたペアということで注目も集めている。

 否応なく、人気になってしまうのも自明の理なのだ。


 さてさて、それだけの人気ともなれば、引く手も数多になり、忙しくなるはずなのだが…。


「カモミールティー二つですねぇ~。」

 注文を受けるマキ


「ありがとうございます。

 どうぞごゆっくり!」

 おしぼりとお冷を渡すミキ


「「しばらく、お待ち下さい。」」

 深々と会釈をして席を離れる二人は満面の笑顔で…疲れを知らない!


「マミィ~、そろそろ交代時間よぉ~。

 安達君も連れて行ってねぇ~。」

 先に休憩していたペアが、マキとミキに声をかける。


「はぁ~い!

 行こう、ミキ!」

「うん!」

 マキに促され、ミキは一緒に教室入口へ向かう。

 すると、入口前には人間看板サンドイッチレディーのミツオが立っている。


「「ミッ君!休憩よ!」」

 ミツオの右腕にマキ、左腕にミキが抱き着いてくる。


「お…りょ~かい!」

 二人に拉致され、他教室の演し物見物に出かけるミツオ。


「尊い…。」

 何だか、不思議な言葉が周囲から漏れ聞こえる状況に違和感を覚えつつ、看板を下ろすミツオだった。


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【次回予告】

 ミツオです。

 まったく、トンデモナイ目にあいました。

 今後は勘弁して欲しいところですね。


 さて、次回は『アルバイトと隙間風』

 みんなぁ、クリスマスはどんなプレゼントが欲しい?

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