図書館にて再び

 いつもの放課後、いつもの図書室で日課をこなしているミツオくん。

 さて、そんな彼のもとにやって来た一人の女子生徒。

 愛用の扇子を口元に置き、優雅に歩み寄ってきた後藤田先輩である。


「ミツオ君、ちょっとよろしいかしら?」

 ミツオが後藤田先輩に顔を向ける。

 後藤田先輩が会釈をするとミツオも会釈をする。

 何の戸惑いもなく、ミツオの隣に座る後藤田先輩と、その間合いを嫌うように席を少し移動するミツオ。


「実は、本日はご相談がありますの。」

 上目遣いで語りかけてくる後藤田先輩に、逃げ腰気味のミツオ。

「別に貴方を食べたりしませんよ?」

 後藤田先輩はクスクス笑いながら、扇子を膝の上に置く。

「私が生徒会長に立候補する事はお話しましたよね?」

「はい…立派な事だと思います。」

 話が見えず、相変わらず逃げ腰のミツオ。

 後藤田先輩は話を続ける。

「それでね、貴方に応援演説の演台に立って頂きたいの。」

「はっ?」

 逃げ腰のまま凍りつくミツオ。

「お願いできるかしら?」

 すがるように後藤田先輩が顔を近づけてくる。

「…いやいや、先輩なら、もっと素敵な先輩方や、有能な後輩君も居るじゃないですか?

 何でオレなんですか?」

「貴方しか居ないの!」

 遂にはミツオの手を両手で抱えだす後藤田先輩。

「…ちょ…ちょっと…ちょっと先輩!」

「お・ね・が・い♡」

 ウルウル瞳の後藤田先輩に身動きが取れないミツオ。

「わ…わ…分かりました。」

「本当♪」

 根負けしたミツオに、笑顔弾ける後藤田先輩。


 さて、一段落したところで打ち合わせが始まる。

「…というわけで、門前演説もお願いね♪」

「は…はぁ。」

 応援演説は、いつの間にか辻立ち演説まで同行する事になってしまう。

「あ…あのぉ~、その門前演説についてなんですが…。」

「ああ、お二人のお嬢さんの応援も折込み済みよ♪」

 扇子を口元に戻し、笑顔で受け答える後藤田先輩。

「ま…まさか…。」

「根回しはしておいたから、心配無用よ♡」

 ミツオ君、轟沈さる。


「じゃぁ、来週からよろしくねぇ~♪」

 扇子を振りながら図書館を出ていく後藤田先輩に、すっかり疲れ切ったように肩を落としているミツオだった。


 ~同じ頃、テニスコートでは~

 練習が一服し休憩していたミキとマキのところへ、テニス部部長から吉報がもたらされる。


「ええ~?私たちが生徒会長選挙の応援を?」

 ミキが驚けば

「誰の応援をすれば良いんですか?」

 マキが質問する。


「元陸上部の後藤田ごとうだ 美由紀みゆきさんよ。」

「「えぇ~~~!あのお嬢様ぁ~!」」

 部長の答えに驚きを隠さないミキとマキ。


 女子生徒の人気は微妙ではあるが、頭のキレは折り紙付きとなれば一目置かれる。

 しかも、大和撫子にほんびじんを地で行くような、所作や言葉遣いの丁寧さに定評のある女性。

 男子生徒の支持は絶大で、彼女の私設応援団『ゴクミ』なるものまで存在している。


「でもでも、私たちが応援するって投票を呼びかける話でしょ?」

 ミキが質問すれば

「そうでも、無いみたいなの。」

 部長が答える。

「何をすれば良いんですか?」

 マキも質問する。

で、彼女の演説を応援して欲しいそうよ。

 しかも、彼女直々のご指名で。」

「「…。」」

 ミキとマキは戸惑ってしまう。


「あなた方のにも話は通してあるそうよ。」

 そう伝え終わると、他の部員のところへ行ってしまう部長。


「ねぇ~、マキぃ~。」

 ミキが拳を握りながら、マキへ視線を送る。

「なぁ~にぃ~、ミキぃ~。」

 マキも拳を握り、ミキへ視線を合わせる。

「「これは、事情聴取が必要ね!!」」

 二人の息はピッタリと合う!


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【次回予告】

 ハ…ハ…ハックション!

 何か、嫌な予感がしますねぇ…ミツオです。

 なんだろう、寒気もしてきました…風邪でも引いたかなぁ?


 さて次回は『後藤田生徒会長!』

 へっ?

 後藤田先輩との関係を説明しろ?

 そんなのオレが聞きたいぐらいですよ!

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