マキの告白

「ねぇ、ミツオ君。

 そんな気持ちのままで苦しくないの?」

 校舎裏で、私はミツオ君に断られることを承知の上で告白しました。

「…ごめん。」

 ミツオ君は頭を下げたままでした。


 でも、私は知っていました。

 女の子を振った後に泣き出しそうな顔になっている事を…。


「いつまでも、過去に縛られてはダメっ!」

 私は彼の肩を揺すりました。

 彼は身体を起こすと、顔を私に向けてきます。

 その目には涙が薄っすらと見て取れます。


「ミツオ君だって、恋の喪失感に逃げ込んだらダメだよ。」

 この一言は、はっきり言ってカケでした。

 …でも、彼の涙は瞳から溢れ始めます。


「ミキチャン…ゴメンネ…。

 ミキチャン…ゴメンネ…。

 ミキチャン…。」

 彼の呟く声が聞こえる…好きだったの名前を唱えるように。


 私は思わず彼の頭を胸に抱きしめてしまいました。

「私がになってあげる…。

 だから、もう苦しまないで!」


 いよいよ泣き出してしまうミツオ君。

 あの怖い笑顔と獣の瞳の持ち主が、小さい男の子のようにむせび泣いている。

 それがどうしようもなく可愛くて、愛おしくて…私は彼を抱きしめていました、彼が泣き止むまで。


 ◇ ◇ ◇


「その後だったかな…。

『一緒に花火をしませんか?』って、ミツオ君が誘ってきて…。

 断る理由もなかったから、付いていったら…浴衣姿になって…。」

 マキが頬を赤らめる

「へ~、そうだったんだぁ。

 浴衣姿…似合ってそうねぇ。」

 ミキは頬杖をついている。


 ここは新居のミキとマキの相部屋。

 二人は白い猫脚テーブルに向かい合って座り…恋バナ中。


「でも…ミッ君が私のことをそれほど…。」

 しあわせオーラ全開のミキ。


「ええ、あなたが転校生として教室に入ってきた時…

 あなたの名前を耳にした時、もしや!

 とは思ったのよねぇ…。

 まぁ、ミツオ君の顔を見たら納得出来たんだけど…ね。」

 ついムッとするマキ。


「えへへ…ゴメンネ。」

 ミキがマキにテヘペロをしてみせれば

「昔だったらともかく、今は私のほうが有利ですけどね。」

 マキはミキにウインクしてみせる。


 そして二人は顔を見合わせて笑い出す。


 一通り笑い終わったところで

「その…ありがとうね、ミッ君を好きになってくれて。」

 ミキがうつ向きながらマキに語りかけた。

「何よ、藪から棒に。」

「…何でもない!」

 マキの返答に、前言を打ち消すミキ。

 不思議そうな顔をするマキ。


「ミキぃ~、マキぃ~、ごはんよぉ~。」

 エリの呼び声が一階から聞こえる。


「「はぁ~い!」」

 二人は返事をして立ち上がり階段へ向かう。

 そして、ミキの耳元でマキが囁く

「ミツオ君の心に居てくれて、ありがと!」

 思わずマキの背中に抱きついてしまうミキだった。


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【次回予告】

 後藤田ごとうだ 美由紀みゆきと申します。

 え、私がなぜここに居るかって?

 心得のない方々ね…失礼しちゃうわ!


 さて次回は『図書館にて再び』

 フフフ…ミツオ君、浮気はご法度のようよ。

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