図書室にて
マキとミキが
もともと、マキとミキのエスコートをするために、彼女たちの練習をテニスコートの外から眺めていたのだが…。
「ミッ君!
他の娘に目移りしたらダメだからね!」
とミキに怒られれば
「ミツオ君、他の娘の迷惑になるから…。」
とマキにも言われ…。
自習も兼ねて図書室で勉強することになるミツオだった。
「お久しぶりね、安達君。」
席で読書をしているミツオに声をかける女子生徒が一人。
「ああ、後藤田先輩…お身体の方はもう大丈夫なんですか?」
「ええ、お陰様で。
となり、よろしい?」
「ど、どうぞ。」
ミツオの隣に座り、愛用の扇子を口元に置き、優雅に文庫本を読み始める後藤田先輩。
ミツオは気にする風もなく、彼も本を読んでいる。
恋人のような距離感でお互いを意識していない奇妙な風景が図書室に映えている。
やがて放課後の終了を知らせるチャイムが鳴る。
「じゃぁ、先輩。
先上がります、お疲れ様です。」
ミツオが席を立つと後藤田先輩は彼に視線を送る。
「私、生徒会長に立候補することにしたの。」
後藤田先輩が口元の扇子をパチリと開く。
「へぇ~、頑張って下さい。」
後頭部をかくミツオ。
「応援よろしくね。」
後藤田先輩が口元の扇子をパチリと閉じる。
「了解です!」
二言三言言葉をかわし、ミツオは図書室を出て行った。
「頑張らないと…ね。」
ミツオを見送り、口元の扇子を揺らしながら後藤田先輩は微笑んだ。
~ミツオside~
さて、図書室を飛び出し、
「よぉ、若者諸君。
偉大なる母が迎えに来てやったぞ!」
助手席の窓を開け、謎の言葉を放つかぁちゃん。
「こんにちは。」
運転席にはエリさんが座っている。
「お母さん!」
車に一歩近づくマキ、車から一歩退くミキ。
「さぁ、マキちゃん乗って乗って!
それから…」
マキを後席に誘いながら、かぁちゃんの視線はミキへ
「ミキ!
あんたも乗りな!」
ミキも後席へ誘うかぁちゃん。
「え…でも…私…」
「ごちゃごちゃ言わない!
マキちゃん、ミキを拉致って!」
さらに後ろへ一歩下がりかけたミキの腕をガッチリ掴むマキ
「行こうミキ。」
そのまま二人は車上の人となる。
さてお立会い!
うちのかぁちゃんの車はノッポの軽自動車、現状一人は徒歩で帰ることになる。
「おばさま、やっぱり私が…」
ミキが降車しようとすると…
「おいっ!ミツオ!」
「はい、母上様!」
「女の子を一人で歩いて帰すような教育はした覚えはないのだが?」
「はい、仰せの通りです、母上!」
「だったら、分かってるね?」
助手席から満面の笑みを向けてくるかぁちゃん。
「貴女の愚息は猛ダッシュで帰宅します!」
「ヨロシイ!
エリちゃん、車だして!」
エリさんは申し訳なさそうに頭を下げ車を運転していった。
さあ、うかうかしていられない。
早く帰らないと、過去の恥態が白日の下にさらされてしまう。
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【次回予告】
ミキでぇ~~す。
いよいよ秋の大会がはじまります!
マキと一緒なのは癪だけど、いいとこ見せてミッ君に猛アピールよ!
さて次回は『お引越し』
ふぇ?
私がお引越しなのぉ?
なんでぇ~~?!
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