秘めたる思い
休日のテニスコート、ミキとマキは練習に励んでいる。
「セィッ!」
ミキがサーブを放ち
「ハァッ!」
マキがレシーブする
ミキとマキの長いラリーが繰り返されていく…ひと月前に入部したミキも今では立派な戦力になっている。
「マキには負けられないっ!」
たったそれだけの為にテニス部No.2の実力をもぎ取ったミキ…
(実力だけは本物のようね…。)
ラリーを重ねながら、日々上達する
(テニスがこれ程楽しいなんて…知らなかった!)
マキに釣られてミキの腕前は日進月歩の上達をみせた。
そしてミキも
二人のラリーは続く、まるで会話を楽しむ恋人同士のように…。
◇ ◇ ◇
「お疲れさま♪」
エリがバスケットを持ってコートに入ってくる。
マキとミキはタオルで汗を拭きながら、
そしてテニスコートの端にあるベンチに腰掛け、昼食が始まる。
これが最近の彼女たちの週末である。
「それで…いつから彼の事に興味を持ったの?」
ミキがマキに聞いてくる。
「そうねぇ。
きっかけは、多分あれかな…。」
マキはぼんやりと空を見ながら語り始める。
~秘めたる思い マキside~
ある日の放課後、マキが部室へ向かう途中、体育館の裏で女子生徒と話をしているミツオを見かけた。
強姦騒動後のことで、ミツオを少なからず知っていたマキは、ミツオと女子生徒の側に近づいて行った。
「安達君…その…私と付き合ってもらえませんか?」
女子生徒が胸の前で両手を合わせ、すがるような眼差しでミツオを見ている。
マキの位置からはミツオの顔は見えない。
「ごめんなさい。
君の気持ちには答えられない。」
ミツオは深々と頭を下げていた。
「…どうして?
…どうして?」
女子生徒が問い返すが頭を下げたままのミツオは無言。
「…分かりました。
さようなら…。」
女子生徒は立ち去り、彼女の気配が消えたところで顔を起こすミツオ。
そこへ、マキとは反対のところから男子生徒がミツオのところへ駆け寄ってくる。
ミツオの
「なんでだよ!
なんでだよ!
…答えろ、安達ぃ!!」
そう言ってミツオを殴る男子生徒。
マキが駆け寄ろうとすると、騒ぎを聞いたのか、女子生徒が駆け戻ってくる。
「やめてぇ~!
タツヤぁ~!」
男子生徒の背中にすがる女子生徒。
「で…でもよぉ…。」
男子生徒が女子生徒の方に振り返る、ミツオを地面に押し倒してから。
「もう…いいの。」
女子生徒は男子生徒の腕を引っ張り、教室の方へ歩いて行った。
二人の姿が視界から消えると、何事もなかったかのように立ち上がり、ズボンのホコリを落とすミツオ。
その顔には感情などは一切無く、強いて言えば無理矢理内面を押し殺している印象にも見えた。
淡々とした彼の所作に、一抹の寂しさを垣間見てしまい、立ち去るミツオの姿に胸が苦しくなるマキ。
◇ ◇ ◇
「で、ミツオ君に告白して…グダグダになって…今に至ってるの♪」
「ごちそうさまでした♪」
エリとミキがニヤニヤしている。
「ミキぃ~。
あんたも白状しなさい!」
「ヒィ~~~ッ!」
マキとミキのじゃれ合う姿を眺めながるエリは、さらにニヤけている。
~秘めたる思い ミキside~
小さい頃から身近に居た
いつも、どんな時でも側に居てくれた
ひょっとしたら、両親よりも過ごした時間が長かったかも知れない
ミッ君はそういう子だった。
弱い子を庇って、友達とケンカした時も
周りの友達から村八分にされた時も
一人で公園の砂場で泣いていた時も
ミッ君は私の傍に居て、励ましてくれた。
小学六年の夏にミッ君と花火を楽しんだ時、私は彼のことが好きなのだとはっきり判りました。
親の都合で海外に引っ越すことになって…海外で生活し始めたら凄く寂しくなって…。
だから、ミッ君に手紙を書きました。
でも、いつしか彼のことを忘れてしまって…。
今こうしてミッ君と同じ学び舎に居て、同じ空気の中に居て、同じ友達と触れ合って…。
もう…失いたくない!
取り戻したい!
今はただただ彼と一緒に居たい、離れたくない!
それが全て!
だから今は彼の事で心の中をイッパイにする。
私の出来る全てを彼に捧げて
彼が喜んでくれるように、私の出来る努力の全てを…。
◇ ◇ ◇
ミキはいつの間にか、涙をこぼしている。
「私だって負ける気はないわよ!」
マキがウィンクするとミキも頷く
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【次回予告】
マキでぇ~~す。
さぁ、ミキもすっかり私のパートナーに育ってくれて、秋の大会がとっても楽しみ!
さて次回は『図書室にて』
ちょっとぉ~ミツオ~~!
その娘、誰よぉ?
説明しなさい!!
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