メイド
デートをしてから一週間が経った。彼女の友人が乱入するというアクシデントはあったものの楽しいデートだったと私は思っている。
しかし、彼女の様子が変だ。それに気付いたのは彼女が会社から帰ってきてからだ。ずっとソワソワしており、今もソファの周りをひたすらに歩いて此方をチラチラ見ている。
「どうしたの?なんかあった?」
「え、えっと…あ、あのね!」
必死な彼女の表情に不安が募る。私は恐る恐る「うん。」と頷いた。
「わ、私…私…め、め、めーいど。メイド服!メイド服着てみたいなーって、ハハ…」
「…え?」
「あ、いや…な、何でもない。忘れて。」
「…見たい…」
「へ?」
「メイド姿が見たい!」
この時、私の脳内は『メイド服』に支配されていた。早速、家を飛び出た私は最寄りの雑貨屋へ駆け込む。コスプレ衣装のあるコーナーを見つけると導かれるようにメイド衣装に手を伸ばした。そして瞬く間に帰宅する。
「買ってきた!」
ビニール袋に入ったメイド服を誇らしげに掲げる。彼女は戸惑った様子で見つめる。
「さあ!着てみてくれ!」
そう言うと彼女は顔を段々と紅くする。
「そ、それを着るの!?」
虚を衝かれたような顔をする彼女に私は首を傾げる。
「え?うん。メイド服着たいんでしょ?」
この時の私は純粋無垢な少年のように写っていたのだろう。
「あ、そ、そうなの!着てみたかったの!」
彼女はメイド服を受け取ると部屋を出た。
ユリちゃんのメイド姿…どんなに良いか…
ソファの周りをグルグルしながら想像が膨らませる。
「き、着たよぉ…」
その一言を聴いた瞬間、私の首は物凄い速さで彼女のいる扉を向く。
「お、おう…」
謎の緊張感が漂う。どう彼女を待てばいいのか。立ってればいいのか。腕を組んで待つか。将又、座して待つか。不必要な思考が頭を巡る。
そして、遂にその扉が開いた。最初に見えたのは純白のソックス、華奢な脚をまるで花嫁のように着飾っている。次に目に入ったのはシックなスカートであった。そのスカートとソックスの間の綺麗な素肌が見える絶対領域は私の野心を燻った。
視点を全体に移すとそこには天使がいた。正確にはメイドか。いや、しかしこの尊さを表現するには天使、いや言葉では言い表せない。
「ど、どう?」
飼い犬のようないつもの態度とは変わり、顔を赤らめて恥ずかしそうにする彼女はとても可愛かった。
「か、可愛い過ぎる…」
「え?」
「可愛い過ぎる!!」
私は彼女を抱き上げた。
「きゃあ!ど、どうしたの?」
「可愛い過ぎるメイドにはお仕置きが必要だ!」
その夜はとても良い夜だった。
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