デート-5

「ふーん。なんか普通だね。」


槙音がつまらなそうに呟いた。


「普通じゃないデートって何よ。」


ユリが呆れたように言った。


「例えば暴漢が現れて、彼氏くんが助けたとか。」


「そんな漫画みたいなこと起きないわよ。」


「…ファンと付き合うのも漫画みたいなことだけど…」


「コラ!咲!」


白河が声を荒げた。


「ごめんごめん。秘密だったねー」


「ん?何の話ですか?」


「こっちの話だから蓮くんは気にしないで。ねえ、もういいよね、二人とも。」


「分かった分かった。デートの邪魔して悪かったよ。」


「そうね。もう出ましょうか。咲の奢りで。」


「な、なぬ?!何で私?!そもそも最初に彼氏くんに会いたいって言ったの翠じゃん!」


「じゃあ、お先に失礼します。」


「お、おーい!話聞いてる?」


白河は立ち上がり荷物を手に去ろうとする。槙音はそんな彼女に駄々をこねる子供のように話しかけるが無視をされる。


白河がそのまま席を離れるかと思った時、急に彼女の足が止まった。そして、私の方を向くと真っ直ぐな目で尋ねてきた。


「何処かでお会いしましたっけ?」


私は咄嗟に目を逸らしてしまった。


「気のせいじゃないですかね。」


眉ひとつ動かさないように笑顔をつくる。


「そう…ですか。じゃあ、また。」


そう言い残して二人は帰った。


「やっと二人きりに慣れたー」


ユリが肩に頭を寄せてきた。


「…そうだね。」

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