デート-3
それはナンパをしてから二週間後のことである。鍵を拾った御礼に彼女がランチをご馳走してくれるというのだ。
待ち合わせは、お台場の大きなロボット。予定より早く到着した私は、ソワソワと携帯で前髪を整えていた。時刻を確認すると、まだ予定時刻の三〇分前である。なんとか胸の鼓動を落ち着かせようと、めらちゃんの動画を観る。しかし、胸の音は耳の奥まで響き渡り内容が頭に入らない。
時間を確認するが、まだ五分も経っていない。ネットで『デートしてはいけない事10選』のサイトを開いてみるがあまり参考にもならない。こまめに時間を確認するが変わらない長針。
「
「え?」
目の前に突如と現れた天使に私は声を失った。風に靡く金色の髪は美しく輝き、剥き出しの肩は白く華奢である。ピンクの唇に白く艶のある頬。まん丸の瞳が甘えるように下から真っ直ぐ此方を向く。
この子、自分の可愛さを分かってる。
「ほ、星宮さん。あ、あの…か、可愛いですね。その服。」
これが虚を衝かれた男のできる精一杯の台詞だった。彼女は悪戯に笑うと距離を更に詰めてくる。
「もしかして待たせちゃいました?」
待っていた、この時を。私は待ち望んだあの台詞を言う。ドラマやアニメで観るたびにキザ過ぎると嫌悪していたあの台詞を。男としては一度言ってみたかったあの台詞を。
「いや、全然待ってないですよ。」
言ってしまった。言ってしまった。恐らくこれは私の黒歴史に刻まれることだろう。しかし、言わざる負えなかった。男として。あまり待っていないのも事実。この台詞は必然の結果から出たものなのだ。
「ふふ、優しいんですね。」
私の心情を見透かすように笑う彼女に私の瞳は奪われた。小さな身体を上下させながらくるりと体の向きを変えると「昼ご飯には早すぎますね。」と呟いた。
「だったらお店でも回りましょうか。」
この日の為に財布は分厚くしてきた。だが、私は見誤ったらしい。
「これ可愛いー」
そう言って彼女が手に取った服には二度見するほどの値札が付いていた。
「そ、そうだねー」
冷や汗が止まらない。どうにか彼女の気をその高級品から逸さなければ。
私は彼女を全力でリードした。あの手この手で服屋から離れると、いつの間にかゲームセンターの前まで来ていた。
お洒落なギャルの彼女は、プリクラとかをやるのだろうか。
そんな事を考えながら視線を彼女に移すと、瞳をキラキラさせた少女がそこにいた。そんな子供っぽい表情もするのか。
「時間もありますし、少し寄って行きますか。」
ゲームセンターを指差し、そう言うと彼女は嬉しそうに「はい!」と答えて、そそくさと中へ入って行く。
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