デート-1
数日後、大学の食堂にて。私は一年次からの友人三人と昼食を摂っていた。
拓也「ったくよー。一週間でレポート仕上げて来いとか不可能だろ?」
拓也「しょうがねぇだろ?バイトで忙しかったんだよ。」
琳「オマエ実家暮らしだろ?」
拓也「色々と使うんだよ。」
「その赤髪とかな。」
拓也「これは必要出費だ。」
「あっそ。」
琳「んな!?」
海竜「彼女とのデートで金が必要だったとかじゃないよな?」
琳「お、おい!そんなわけないだろ!ガサツで馬鹿なタクヤに彼女なんて…」
拓也「…うんまあ、夏休み前に告白した。」
琳「…そういえば東京湾に新しくラーメン屋できたらしいぞ。今度一緒に行こうぜ。」
海竜「それはいいな。ついでにコンクリートも持ってくか。」
拓也「東京湾にラーメン屋ってどういうことだよ。オマエら俺を沈めようとしてるだろ?だったら俺より蓮のほうがいいだろ。」
「おい!」
琳「確かにそうだな。じゃあ蓮も"一緒に"連れてくか。」
拓也「なんでだよ!蓮だけでいいだろ!コイツ半年間彼女できたこと黙ってたし、しかも同棲まで始めたんだぞ!」
琳「確かにそれは羨ましいな。マリアナ海溝に変えるか。」
「なぜ深くなった。お前ら非情だぞ。友人に彼女ができたんだ。素直に祝えよ。」
琳「オマエは彼女ができたから、そんな余裕があるんだ。」
海竜「おい待て。」
琳「どうした?」
海竜「コイツは本当に彼女がいるのか…?」
拓也「どういうことだ?」
海竜「俺らは蓮から彼女ができたという報告しか聴いてない…」
琳「まさか…イマジナリーガールフレンド…」
「おい、温かい目で見るな。ちゃんと実在しているわ。」
拓也「大丈夫だ。俺ら友達だろ?ほら、俺の彼女を見て落ち着けよ。」
琳「とりあえず拓也は深海確定な。」
海竜「そうだな。」
拓也「ふざけんな。」
ふと携帯を取り出して時刻を確認する。
「やべ!ユリを迎えに行く時間だ!んじゃあ。」
琳「おう。イマジナリー彼女によろしくな。」
「だからいるって言ってんだろ!」
憐れみの表情をした彼らを後に、私は彼女と初めて話したあの場へ向かう。
今日は彼女とデートだ。デートと称しているがプランがあるわけでもない。ユリは週に二回ほど出社する。仕事内容は知らないが早めに終わった日は今日のように向かいに行くことになっているのだ。
あのビルが視界に写った。そういえば初めて会ったあの日は彼女がめらちゃんのファンだって勘違いしたんだっけ。本当はC.loverの社員であのグッズはサンプル用に持っていた物らしい。確かに職場まで来るファンは度が過ぎているな。まあ、事務所の住所を知っている私の方が危ない気もしなくはないが。
そんな事を考えていると金色の美しい髪を見つけた。
「ユリ!」
そう声を掛けると顔色を一層明るくして可憐な笑顔を見せる。
「蓮くん!」
両手を広げて駆け寄ってくる彼女、その背後には不敵に微笑む女性が二人。 私は寒気を感じながらも腕の中の幼気な彼女の温もりを味わう。
「さてユリちゃん?彼氏くんを紹介してもらうよ。」
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