4.先生

 王様、勇者が生徒会室で座って悩んでいる。ひとりのスーツ姿の人がやってくる。


先生「お疲れ様」

勇者「(立ち上がって)先生、おつかれさまです!」

王様「(座ったまま)いつもきてもらってありがとうございます」

先生「顧問になったからね。

   それで、気になることが?」


 先生が座る。合わせて勇者も席に座る。


勇者「それが、担任の先生に関する告発で……」

王様「《最近スマホゲームで急速に順位を落としているランカーがいる》。

   そう書いてあります」

先生「なるほど。前の生徒会の生徒では?

   少なくとも、前の横領事件の時に証拠は見つからなかったよ。

   なにぶん、かつての生徒会らが大量の課金をしていたからね」

王様「はい。僕も以前に生徒会室を漁りました。

   当然、収支計算書すらまともにつけれていませんでした」

先生「(顎に手を当てて)少なくとも、学校から証拠は出なかった。

   自由にやらせてみたかった、などと奴は言っていた。

   結局、管理不届きを理由に生徒会の顧問をやめさせたけど」

勇者「先生も、なにか気になったことが?」

先生「いいや、むしろ逆だよ」

勇者「逆?」

先生「引き続き、孤立している」

勇者「こ、孤立って……」

王様「むしろ自然さ。

   担任は、以前の生徒会でもほとんど関与がなかった。

   僕らのクラスでも同じ。

   僕らに何か言う時は、小言を言われた時のみ。

   同僚、校長、あるいは理事長から。

   ですよね、先生」

先生「まさしく」

勇者「そ、そんなことが……」

先生「よそ者な私からすれば、すぐにでも解任すべき職務態度だ。

   だが、君たちの担任を開始して一ヶ月満たないで事件が起きた。

   簡単に替えは用意できないそうだ」

王様「先生は常に人手不足ですからね」

先生「だが、罪が明らかになれば話は変わるよ」

王様「まるで、解任を望んでるみたいですね、先生」

先生「(わずかに笑みを浮かべ、)ばれてしまったかな」

勇者「でも、証拠がないんじゃどうすることも……」

王様「先生って、もともと軍の人なんですよね」

先生「そうだったかもしれない」

王様「なら、諜報活動も……」

先生「スパイか?したこともあるが」

王様「ひとつだけ、気になることがあるんです」

先生「ほう?」


 王様は勇者に向く。


王様「勇者さん、暫定連邦生徒会長より、仕事の依頼だ」


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