2
「副ちゃん。」
高校の卒業式が終わり、教室で先生の最後の話も終わると、同じクラスでもある“会長”が私に声を掛けてきた。
1年生の時から同じクラスで生徒会でも一緒の“会長”。
生徒会長だった“会長”が副会長だった私のことを“副ちゃん”と呼んだ。
福富という名字だからか“会長”は初対面の頃から私のことを“福ちゃん”と呼び、私が副会長になってからは恐らく“副ちゃん”と呼んでいる。
何故だかいつもこの仲良しの友達の名前が思い出せず、思い出そうとする前にいつも口が勝手に開く。
「“会長”、生徒会室に一緒に行こう!」
私とは違う系統の可愛い顔をした“会長”にそう言うと、会長は困った顔で笑った。
「ごめんね、私急いで帰らないといけなくて。
後でメッセージを送るね。
春休みは副ちゃんが一人暮らしをする部屋にも遊びに行く。」
「うん!約束ね!」
「うん、約束。
副ちゃん・・・」
会長が言葉を切った後に私の顔をジッと見詰めてきた。
この会長の顔を見て・・・いつもとは全然違う顔に見えるこの顔を見て、会長がまた“予言”をするのだと分かる。
会長は神社の娘。
神職資格を取得する為にそっちの大学に進学もする。
会長は“普通”ではない女の子だった。
それは同じ生徒会の仲間として、そして友達として理解している。
会長には直接は言わないけれど、それはちゃんと理解したうえで会長と友達でいる。
今度は何を“予言”されるのかと思っていると・・・
「ごめんね・・・。」
何故か急に謝られ、会長は心配そうな顔で私のことを見詰めた。
「“朝の人”って北海道に行くんだよね?
今朝も会ったの?」
会長には朝人の話をしていたのでそう聞かれ、私は頷いた。
「副ちゃん、この後の予定は?」
「お父さんとお母さんが高級ホテルのフランス料理に連れていってくれるんだよね!!
卒業祝いなの!!」
「そうなんだ・・・。
それ、予約とかしてるよね?」
「うん、予約してくれてるけど・・・。
なんで?」
「・・・なんでもない。
それにしても“朝の人”ってやっぱりキモいよね。
今年で28歳でしょ?
女子高生に毎日会いに行くとかめちゃくちゃキモいんだけど。」
「彼女もいないし見た目も口も悪い可哀想なオジサンだからそれは仕方ないよ!
私って和泉かおりの若い頃に似てて結構可愛いし!」
自分で言って自分で大笑いすると会長は困った顔で笑い、それから急いで教室を出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます