第7話 誰が何で誰だ?

 「……これからどうしよう」



 俺は頭を抱えて体育座りをする。

 姉さんが帰ってくるまでこの四人と無事に暮らさなければいけないが……物が割れたり、シーツがぐちゃぐちゃになったりしている惨状をみると不安で仕方ない。

 でも、悩んでいても状況は改善しない、やるね気ことをまずはしよう。

 そうなると俺の一つ目の仕事は……まずは状況把握だ。

 家にいた動物は全部で四匹。



 犬の『チワ』 

 うさぎの『ラビ』

 ハムスターの『ハル』 

 そして今日やってきた猫だ。



 そして、四匹がいなくなった代わりに女の子が四人、イヌミミのポニーテールをしている一番身長の高い女の子、次に背の高いのがおさげにネコミミの女の子、その次が肩より長めで少し毛先だけ内側にカールしてるウサミミをつけた女の子。一番小さいのが、小さな丸い耳をつけた一番幼い女の子。

 耳で誰が誰だか大方分かるが、でも、せっかくこいつらが話せるようになったわけだし、点呼がてらコミュニケーションの一環で名前を聞いてみるか。

 俺はまず、一番話が通じそうなイヌミミに声をかける。



「えっと……犬の耳してるってことは……お前はチワであってるか?」



「はい、ご主人様。私はチワで間違いありません」



 チワは丁寧にそう教えてくれる、しっかりしてて頼もしそうなのはいいのだが……。



「ご主人様はちょっとやめてくれないか? 恥ずかしいし、一応修志って名前が……」



「いいえ、ご主人様はご主人様です! 他の名前で呼ぶなんて失礼なことできません!」



 失礼よりも恥ずかしいが上回る! メイド喫茶じゃあるまいし!



「じゃあ、姉さんのことをご主人様って呼んでくれ! 拾ったのあっちだし!」



「いいえ、お世話をしてくださってるのはご主人様の方ですから!」



 すげーな、犬って忠誠心あるって聞いたことあるけど、ここまでなのか。

 なんて……感心してる場合じゃない。

 もう呼び方の方はチワの好きにさせよう、それよりも、他のメンバーの点呼を続けよう。


 次はウサミミの子に声を掛ける。



「うさ耳はラビだな、さっきは怪我しなかったか?」



「うん、さっきはびっくりしただけ」



 さっきまで大泣きしていたウサミミ娘ことラビは、ニコニコしてテレビを見ていた。

 すっかりご機嫌らしい。機嫌が治ってよかった。

 そして、ラビとは別にせっせと動き回る一番小さな女の子。

 さっきからタオルやら何やら隅っこに持っていっているのは、ハムスターの習性だ。

 もう疑う余地はない、俺は女の子を抱き抱えて声を掛ける。



「お前はハルか?」



「ハーちゃん」



「ハムスター娘……でいいんだよな?」



「ハム」



 どうらあってるらしい。



「ハル、他の人が困るから、部屋のものを隅っこに持っていって集めたらダメだぞ」



「はーい」



 一応注意して返事も返ってきたが……理解はしてないだろうな、期待しないでおこう。

 さて、残った猫耳娘が今日姉さんが連れてきたネコミミ娘か。

 この子については何にも知らないな……。



「ネコミミ娘は、名前なんてーの?」



「ふんっ」



 俺が猫耳娘に近づいて声をかけたが、思いっきりそっぽを向いてしまった。

 擦れてんな……。

 まぁ今日初対面だから仕方ないか、信頼関係も他三人と違って構築されてないし。

 とはいえ自己紹介してくれないと、こいつ名前がない状況なんだよな。

 名前があるなら、せっかく喋れるし教えてもらおうと思ったんだが、考えてみればそもそも名前がないかもしれない。



「教えてくんないの? それとも名前ないのか? ならこっちで適当に名前つけるぞ」



 俺はネコミミ娘にそういうと、名前を考え始めた。

 確か、ラビはダンボールに名前書いてあって、チワは姉さんが名前つけたんだよな。

 チワは確かチワワからとったって言ってたっけ……犬種ポメラニアンなのに。

 そんなことを考えていると、貝のように口を閉ざしていた猫が急にぽつりとつ呟いた。

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